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ここではなにも
目が覚めて同じように目を開けたゆきさんが夢を見たんだと笑っていた。いつもより少しだけ遅く起きた朝。
着替えて保育園へ向かう。手を繋いで神社に寄り道をしてお賽銭を入れ、今日も一日よろしくお願いします、と二人で願う。しわとしわを合わせた僕の両手は、同じように祈るゆきさんの両手より大きい。いつかは同じくらいになるだろう。同じくらいの大きさになった時は手を繋いで歩くなんてできない。今、この瞬間を忘れないようにしたい。
日常。ゆかりさんとゆきさんと僕の日常。
この日常の最中にも泣いている人がいて、悩んでいる人がいて絶望している人がいて、たくさんの人と状況があって同じ空の下で過ごしている自分がほんの少しだけ嫌になる。僕だけがこうやって暮らしているようで。絶望は抱えきれない。もうほとんどSNSは見なくなった。誰かの言葉や連なった言葉や、その間に差し込まれる宣伝より本を読み始めた。逃避なのはわかっている。ただ現実を見つめると、たぶんどうにかなってしまう。目を閉じないように現実を見る。逸らしていない。誰かの言葉を鵜呑みにして、ならばと動き出せる足がない。もう悩みや思考で頭の中がパンクして溢れている。日常を保っている。
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