ゆかりある日記 その15

IKEAに行く
ゆかりさんとIKEAに行った。目的は台所に置くラックみたいなやつが欲しいという気持ちと、数ヶ月に一回僕がIKEAに行きたいという気持ちだったからだ。数ヶ月に一度IKEAに行き、自分のことは売っている棚に上げて上手いことやってんなーと思いたい。家族づれで行きやすいように広い通路に、子供が飽きないようにところどころにあるぬいぐるみや子ども部屋のアクセント、そして歩き疲れた頃合いに広がる子供コーナー。もうIKEAの手玉に取られている。前に行った時はサブミナルのように現れるクマのぬいぐるみを買ってしまった。今日だって小さいクマのぬいぐるみを買ってしまいそうになる。だって500円。交通費くらいのお金で可愛いクマを購入できるなんてと思うと欲しくなるし、IKEAの素晴らしさに惚れ惚れする。
早口すぎた。
無事にIKEAを堪能し台所に置く用のラックというかワゴンを買ってシャトルバスに乗って帰る。膝の上に置いた作る前のラックは重たくて忍者の拷問を思い出したので、ゆかりさんに伝えると、何もわかっていないようだった。ギザギザした床の上に正座して重たいものを太ももに乗せられるやつだよ!と伝えても、最終的には舌を噛んで自害するやつだよ!と伝えても伝わらなかった。

神さまもう少しだけ
IKEAから出発するシャトルバスが動き始めた瞬間、呼吸が止まり1秒、僕は真剣な顔して思った。お腹が痛い。ゆかりさんごめん、先に帰ってて、とIKEAに戻ってトイレに行こうとしたけれど、もうシャトルバスは道路を走っている。あ、どうしようと思った。30年以上生きている経験上、腹痛の初動でどうなるかはわかる。これはヤバい、ダメなやつだと思った。どうしよう、バスを止めてもらうか、ダメだ。駅へ向かっている。どうすれば、バスジャックしてコンビニへ行ってもらうか、いや言えばコンビニに寄ってくれるかもしれない、ただ他の乗客がどう思うか、あいつ、なんだよ、帰らせろー!と暴動になったら、でもダメかもしれない、ダメかもだ、
ゆかりさんを見ると、心配そうにこっちを見ていたが何も言えず、目を開けているとお腹が破裂しそうなので、肛門を閉じるように目を瞑る。考える。他のことを考える。生命はなぜ生まれたのか、神はなぜ天と地を作り、距離という概念を生んだのか、距離がなければ目の前はトイレだ。
目の前はトイレか、じゃあもういいんじゃないかな、ゆかりさんもいるし、なんか同情してもらえそうな気がする、と目を開けると駅前。駅前だ駅前だ、あともう少し我慢すればギリギリ人間の形を保てるかもしれない、と思い最後の力を振り絞りゆかりさんに、ちょっと荷物頼むね、となんだか新しい形の死亡フラグを立ててバスを出る。
走ったら刺激してしまいそうなので、競歩で進む。どこにトイレがあるだろうと近くにはパチンコ屋がある。そこにはトイレがあるはずと入ってみたら、爆音に包まれトイレが見つからない。だめだとすぐに出ると目の前にトイレが。走る。進む。スピードは光よりも速いせいでゆっくりにさえ感じる。トイレに間に合えばもう僕は人間だ。神様もう一度だけ人間でいたい。だからお願い、とトイレしか見ずに歩いた。歩いている瞬間、少し浮いていたと思う。足が地面につく前に、もう片方の足も浮いていた。おそらく。
神様ありがとう。

#日記

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