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【取材記事】SmartHRが目指す「TAMを一気に広げる」新領域への展開とは

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本記事はSmartHRが10月14日に行った人材マネジメント領域に関する勉強会及び、企業データが使えるノートが行った個別取材内容を基にした同社の分析コンテンツとなります。

今年の6月にITmediaでリリースした「ユニコーン企業となったSmartHRは、どれほど規格外なのか?」の続編コンテンツの位置づけです。

今回の勉強会並びに個別取材を通じてSmartHRの成長に対する解像度があがってきたため、記事化をしました。

「SmartHRはなぜ1,700億円を超える企業価値評価を受けるのか」や「HRテック領域の今後の動向を知りたい方」に役立つ内容となっています。

TAMの広がりがバリュエーションに大きな影響


先週、10月14日にSmartHRは「SmartHRが人事評価業務を効率化する新機能「人事評価」を公開!」とのプレスリリースを出し、従来の労務管理クラウド領域に加え人材マネジメント領域にサービスを拡充するリリースを公表しました。

「好調なSmartHRが新サービスを出した」という認識をされる方が大半だと思いますが、今回の発表内容はSmartHRの企業価値を理解する上で重要なリリースだと捉えています。

まずはこの前提となるSaaS企業の直近のバリュエーションに触れていきます。

上場SaaS企業のバリュエーションを見ていくと、押しなべてPSR20倍をつけた2020年の状況から変化が見られ、現在は一部の企業のみが高マルチプルを維持する2極化に移りつつあります。

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* 企業データが使えるノート作成

上図は直近株価での予想PSRとなり、25倍を超える企業はfreee、マネーフォワード、ラクス、インフォマート、スパイダープラスの5社です。

これらの企業に共通する点は高い成長率もさることながら「将来的なTAMの広がりがイメージできる」ことだと見られます。

例えば、freeeは創業当初から中小企業、個人事業主向けの「会計freee」を提供してきました。同社が試算する当該領域のTAMは6,300億円。それに引き続き、近接領域である人事・労務ソフト「人事労務freee」をリリース。こちらのTAMは5,500億円といったように、コアプロダクトをベースにバックオフィス系サービスラインナップを拡充し、TAMを次々と広げてきました。

直近の決算説明会資料などで打ち出しているERP化やMidセグメント顧客の深耕も同様にTAMを広げる動きと言えます。

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* freee 2021年 6月期通期決算説明会資料より

サービスラインナップが広がることで、顧客数やIDの増加によるARRの向上だけではなく、クロスセルによって単価の上げることが可能となり「量と質」双方の掛け合わせによって持続的な高成長を狙うことができます。

一方で、単一プロダクトでの展開やクロスセルが行いづらいSaaSプロダクトの場合はID数増の量的な成長のみに頼る形となり、時間が経つにつれ成長率の逓減が避けられず、バリュエーションも上がりづらい状況となっています。

またバーティカルSaaSにおいてもTAMについて同様の構図があると考えられます。

従来、バーティカルSaaSは業界特化であることから対象顧客数が限定され「ホリゾンタルSaaSよりTAMが限られる」と見方が多くなされていました。

しかしながら、バーティカルSaaSは業界のデファクト的に利用がなされると競合の少なさから代替製品による解約リスクも低い一方で、業界への浸透によって周辺業務に対する別プロダクト提供が行いやすいなど「成長持続性」が高いという見方がなされるようになってきました。

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* インフォマート 2021年12月期 第2四半期決算説明資料

インフォマートは飲食店や食品卸での受発注に関するシェアが高く、スパイダープラスもサブコンの図面管理などにおけるデファクトとなっていることから、将来的なTAMを広げやすいポジションにいると見られています。

このようにSaaS企業のIPO後のバリュエーションの観点においては、創業からのプロダクトのみならず、次なるTAMへのアプローチが可能かを描けるかが重要となっています。

HRテックの種類とSmartHRの今までのポジショニング

今回、SmartHRが公表した内容はまさにこのTAMの拡大の狙いを示したもの言えます。続けて解説をしていきます。

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