【COO取材】SmartHR ARR100億円突破をスピード解説
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3月14日、SmartHR本社でプレス向け事業戦略発表会が行われた。
クラウド人事労務ソフトSmartHRがT2D3ペースでARR100億円達成をしたことに加え、今後の事業展開に関する戦略発表が主な内容だ。
登壇者は、創業者宮田氏の退任後、初の代表記者会見となった現代表取締役CEO 芹澤氏、事業執行責任を担う取締役COO 倉橋氏が担った。
SaaS界隈で語られる「T2D3(5年で72倍成長)」は、基本的にはグローバルに展開を行うプロダクトを前提とした成長目標であり、それを国内市場のみで達成した点にSmartHRの凄みがある。
国内SaaS史上、稀に見る成長を続けるSmartHRに死角はないのか。
企業データが使えるノートでは、記者会見に加え、取締役COO倉橋氏に個別インタビューを申し込み、成長要因の詳細や今後の展望を独自視点から取材した。
ARR100億円成長に達したスピード感は?
SmartHRが業績に関する発表を行ったのは資金調達シリーズDラウンドのリリースを公表した2021年6月に遡る。
前回時にはARRが45億円に対し、前年同期比がYonY+106.2%とその驚異的な成長スピードに大きな注目が集まった。(企業データが使えるノートでもITmediaで取材し記事化)
当時は、新興株式市場の盛り上がりはピークを迎え、シリーズDラウンドは海外投資家を中心に組成されARRマルチプルで37.7倍の驚異的なバリュエーションを記録した。
それから1年9か月が経った2023年3月、SmartHRはどのような成長軌道を描いたのだろうか。
■ 既存の労務管理システムが順調に推移。タレントマネジメントシステムも新規ARR獲得に寄与。
SmartHRが公表した資料では、直近時点のARRが100億円を突破したことに加え、受注ベースではARR110億円に達したことを報告している。
ARR100億円時点の成長率は明かされていないものの、資料中の2022年8月時点では、前年同期比+68.2%のARR84.3億円と、2019年6月時の成長スピードからは一定減速するものの、同規模の国内SaaSに比べると引き続き圧倒的な成長率を見せている。
以下は、前回発表時及び今回公表のARRとARR成長率をプロットした散布図だ。
↓ ↓ ↓
いずれの時点においても、ARR成長のMendoza Lineを上回り、国内上場SaaS企業のARRをごぼう抜きしながら、今回「ARR100億円クラブ」に仲間入りを果たしたことが伺える。
拡大の背景には創業プロダクトである労務管理クラウドSmartHRが引き続き高水準で成長を続けていることが大きい。
デロイトトーマツ ミック経済研究が公表する労務管理クラウド市場のシェアでは、SmartHRがこの2年間で5%シェアを伸ばし、市場の過半を占めていることを報じている。
顧客の獲得においても中堅・中小企業のみならず、5,000名規模といった大型エンタープライズ企業の売上比率が上がっており、製品や営業、導入に対する成熟度が上がっていることが伺える。
加えて、今回、「ARR成長に大きく寄与した(COO 倉橋氏)」というのが、タレントマネジメント機能だ。
これは、労務管理システムとは異なり「人事評価・分析レポート」「従業員サーベイ」「配置シュミレーション」といった人員管理や組織における人材活用を可能とする機能であり「カオナビ」やプラスアルファ・コンサルティングが提供する「タレントパレット」、リンクアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」などが競合プロダクトとなる。
SmartHRは、入退社や残業時間といったデータを労務管理クラウドを通じて活用できる強みを活かし、この2年程でタレントマネジメント機能の開発、販促を強化してきた。
「現在の新規獲得ARRの数割はタレントマネジメント機能によるもの(COO倉橋氏)」とARR100億円達成に大きく貢献していることをアピールしている。
人事評価機能の利用社数は2020年末頃から大幅に増加し、有料顧客数が500社以上に達している。
企業データが使えるノートが集計するSaaS KPIデータによると、エンタープライズ向けに同様の機能を有するプラスアルファ・コンサルティングのタレントパレットの導入社数は1,103社(2023年2月時点)、中堅規模の顧客を中心とするカオナビは2,880社(2023年2月時点)となり、SmartHRがそれらの企業を急速に追い上げている様子が伺える。
労務管理クラウドで盤石な成長を見せつつ、シナジーのあるタレントマネジメント領域でも新プロダクト立ち上げに成功したことがARR100億円達成の背景と言える。
HR領域は数年前より戦国時代に突入
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