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「SaaS×Fintech」トップランナーの景色とは? LayerX 福島 良典 氏
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本記事では2回シリーズに渡り「SaaS×Fintech」領域のトップランナーにインタビューを行っている。
なぜ今「SaaS×Fintech」注目をすべきか、そして、どのような勝ち筋を見出しているのか。
企業データが使えるノートでは、代表取締役CEO福島 良典氏に取材を行い、今後のSaaSビジネスを考える上で欠かせないポイントを明らかにしていく。
(連続シリーズの次回は株式会社WiLパートナーの久保田雅也氏)
![スクリーンショット 2022-05-26 104355](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79329272/picture_pc_7b4ed3385e1f3be298f461c9334ebdb5.png?width=1200)
福島 良典 氏 || LayerX 代表取締役CEO。東京大学大学院工学研究科卒。大学時代にコンピュータ・サイエンス、機械学習を専攻。2012年、大学院在学中にニュースアプリGunosyを創業し、代表取締役に就任。創業から2年半で東証マザーズに上場。2018年にLayerXの代表取締役CEOに就任、ブロックチェーンコンサルティング事業からSaaS×Fintech事業への転換を図る。
SaaS×Fintech 注目が高まる背景とは
これまで「Fintech」から想起されるイメージは、オンラインバンキングやロボアドバイザリー、資産管理サービスなどのBtoC寄りのサービスであった。一方で、BtoBを主体とするSaaS領域においては、今後、企業のお金にまつわる体験や業務プロセスの効率化が進んでいくと見られている。まずは、福島氏が事業運営を行う中での視点を探っていく。
――― SaaSとFintechの掛け合わせが進んでいる背景は
福島氏:企業のお金のやりとりに関わるSaaSはFintechの要素を必然的に内包していくと考えています。
業務効率化やプロセスの改善を図っていく上では、SaaS上で金融や決済機能が使えることが当然の流れとして起こります。
例えば、弊社の「バクラク」シリーズがカバーしている領域では、請求書の受取り、稟議、仕訳業務といったプロセスを経て、請求書の支払い業務が生じます。
これらは分断しているわけではないので、一連の体験としてシステムが提供される必要がありますが、BtoBの業務プロセスでは、なぜか分断されている場面が多く残っています。
Fintechと言うと難しく捉えられるかもしれません。
個人がECサイトで買い物をする際に「請求書が送られてきて支払い後に物が届くサービス」と「ボタンワンクリックで決済が完了し商品が届くサービス」どちらの使い勝手がいいかは明らかです。
しかし、BtoB取引は依然として前者の状態のままで、PCの購入でさえ請求書を受け取って支払わないと届かない状況です。ECサイトに決済機能が付いているように、「バクラク」も請求書受取SaaSに決済ボタンを付けようとしていると考えてください。
これらはごく自然な流れです。
Shopify、あるいはUberは、個人商店やギグワーカーの売上のチャージ先としてカードや決済システムを備えています。
わざわざ銀行口座で売上を管理して新たな仕入れや支払いをするよりも、サービス上での収入源をそのまま決済に使える方が便利ですから、一連の体験で提供しているのです。
今後は国内で労務・給与管理SaaSでFintechを内包するプレイヤーが現れることは想像に難くありません。
![スクリーンショット 2022-05-26 111548](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79330909/picture_pc_c86068b7a8c719105507400b5a014a45.png?width=1200)
現在は給与管理SaaSで給与計算を行った後、経理や労務の担当者がネットバンキングで給与を振り込んでいます。ですがこれは不便なECサイトと同様に、給与計算のプロセス直後に給与支払いができる方がずっと楽な体験です。
――― LayerXにとってSaaS×Fintechのベンチマーク企業は
福島氏:企業単位でのベンチマーク先は特に考えておらず、カスタマーエクスペリエンスからのアプローチをとっています。
「BtoCで提供されている優れたユーザー体験がBtoBの領域に展開されていく」という視点で捉えています。
例えば、楽天です。彼らはBtoCでEC事業を起点に決済やカードといった金融機能を取り込み、物流事業やモバイル事業にも乗り出しました。
BtoBでも、EC化率やコミュニケーションのデジタル化率、スマホ経由でのSaaS利用率が上がっているのは明らかです。例えば、オフィスサプライの発注は店舗に行ってモノを見るのではなく、アスクルで注文するのが当たり前になっています。
SaaSとFintechというラベルがついていますが、目指しているのはユーザー体験の改善です。BtoCで当たり前になっている良い体験が、BtoBに取り入れられない方が不自然で、こうしたアナロジーで考えると弊社のビジョンも理解しやすいはずです。
SaaS×Fintechを担うのはSaaS2.0企業?
――― LayerXが構想しているロードマップをどのように描いているのでしょうか
福島氏:一貫してBtoB取引におけるお客様のペインを起点にしていて、顧客に生じる課題を順番に解決していきます。
弊社が新サービスをローンチするタイミングを見て不思議に思う方もいるかもしれませんが、当初描いていたロードマップのなかから、順番を決めながら取り組んでいます。
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請求書関連の業務は単一プロダクトである程度解決できますが、ワークフローまで入り込むと現場や他部署も絡んできますので、クラウド請求書受領ソフト「バクラク請求書」、クラウドワークフローシステム「バクラク申請」の順でリリースしました。逆は成立しません。
また、市場規模や競合のようなテクニカルな話はあまり気にしていません。
自分たちが向き合うお客様のペイン、将来のユーザーになるような人たちのペインと向き合いながら、プロダクト開発の順番を決めていてそれが正しいと思っています。
――― この数年でSaaSの普及も進んできました。そのようなSaaS企業がFintechを実装していく動きが進むのでしょうか
福島氏:決済、融資や与信を含めた体験を事前に想定し、SaaSプロダクトを予めデザインしてきた会社かどうかで、Fintechに乗り出すハードルは大きく異なります。
まだSaaSが普及していない時期においては純粋に特定業務の課題解決に特化したプロダクトが大半です。いわばSaaS1.0世代。
FintechはSaaS企業と比べて、会社として持つケイパビリティや技術力、BizDev部隊の質が全く違います。簡単に立ち上げられるビジネスではありませんから、強いビジョンのもとで1社立ち上げるぐらいの気概が必要です。
SaaS1.0世代の企業も金融機能を取り込もうと相当な勢いで準備を進めていると思いますが、この前提のデザインは結構難しく、どんな領域でも時間がかかります。
SaaS2.0と呼ばれるような新たな世代のSaaS企業は、恐らく第一世代のプロダクト設計から学習して、予めデザインされたSaaSを提供していくはずです。
SaaS1.0企業とSaaS2.0企業のせめぎ合いは今後増えていくかも知れません。
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