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DXスタートアップの本命テイラーは「SAPの牙城」を崩せるのか

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2024年はこれまでに増して大企業のシステム障害を目の当たりにした年となった。

菓子大手の江崎グリコは、基幹システムの障害により全国の物流センターで一部業務が停止。冷蔵商品の出荷が滞るなど消費者にも大きな影響を及ぼしている。

システム障害は旧来の基幹システムをERPベースに切り替えの際に発生したと報じられている。

既存システムの残存によって経済損失が生じる、いわゆる「2025年の崖」の解消に向け同様の取り組みを行う企業も多く、ニュースを目にした多くの関係者にも戦慄が走った。

レガシーシステムを温存するにせよ、刷新するにせよ、そこには大きなリスクを孕んでおり、日本企業のDX化の道のりは険しい。

日本のITソフトウェア市場はおよそ11.5兆円、さらにそのうちカスタマイズ型のシステム投資が7兆円と言われているが、果たしてこれは真に「投資」と呼ぶことができるのだろうか。

このような国内企業ITの本丸とも言える課題に果敢に挑戦するスタートアップがある。

ヘッドレスERPの開発・提供を行う、テイラーだ。

写真/テイラー社提供 撮影場所:WeWork竹芝

同社は、2022年、米国の著名VCによるアクセラレータプログラムY Combinatorに日本拠点の企業としては15年ぶり採択されたことでも注目を集めた。

2022年6月には、Next SaaS Media Primary(当時:企業データが使えるノート)でも取材を行っている。

テイラーは、昨今の国内トップSaaSスタートアップに見られるT2D3成長のような急速なトラクションを見せているわけではない。

しかし、今回のインタビューでは「SAPのシステムをリプレイスする事例が出始めている(柴田氏)」と巨大市場攻略に向けた着実な前進が見られた。

TAMが広大にありながらもその難易度の高さからスタートアップの参入が極めて限定的だったERP/基幹システム市場。

グローバルプレイヤーもひしめく難航不落の市場に挑むテイラーをNext SaaS Media Primaryでは知られざる「DXスタートアップの本命」と位置づけている。

今年7月、米国拠点から一時帰国をしていた柴田氏に直撃し、当事者の声を聞いた。

柴田 陽 | テイラー株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー出身。店舗集客サービス「スマポ」、タクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」など、数々のヒットアプリを手がける。3つの会社の創業・売却の経験を持つシリアルアントレプレナー。2016年11月に株式会社クラウドポート(現ファンズ株式会社)共同創業。2021年テイラー株式会社を設立。

開発時間を「10分の1」に短縮するヘッドレスERP「Tailor Platform」

まず、改めてテイラーの事業を振り返る。

テイラーは、エンタープライズ向けの大規模ERPをスピーディーに構築可能なHeadless ERPプラットフォーム「Tailor Platform」の開発・提供を行っている。

従来、大企業向けのERPはSAPやオラクル、中堅企業向けには、富士通、大塚商会、オービックなどのベンダーがシステム提供を行ってきた。

企業は、これらERPシステムや独自システムを自社の業務にカスタマイズした形で導入し、長年にわたって保守・運用を行っている。

テイラーの調べでは「国内エンタープライズ企業の65%は自社の業務に合わせた独自システムを活用している」という調査結果も出ている。

既存のシステムは企業のユーザーがそれまでの業務プロセスを変えることなく使用できる利点があった。一方で、メンテナンスや保守コストの増加や、人員の退職などに伴いシステムの全体像がブラックボックス化するなど、さまざまなリスクを抱えやすい。

2018年に経済産業省が公表したDXレポートなどでは、レガシーシステムの残存によって、日本企業の競争力が大きく損なわれる可能性を指摘し、その改革の必要性を訴えているが、冒頭のグリコの事案のように道半ばにある企業も多い。

このような日本企業にとっての「一丁目一番地」のIT課題に変革をもたらしているのがテイラーだ。

「ローコードでERPを構築できるプラットフォームを提供している(柴田氏)」Tailor Platformを活用することで、SIerへの依存、年単位でかかっていた開発期間、開発サイドとユーザーサイドの認識ギャップの解消といった構造的な課題の解消が見え始めている。

ここからは実際に柴田氏に話を聞いていく。

Tailor Platformは「既にSAPの切り替えに成功し始めている」

――― 前回の取材から2年が経ちました。テイラーの進捗はいかがでしょうか。
柴田氏: この数か月間、テイラーでは、Tailor Platformが実際に提供可能になったことを踏まえ、コンサルティングからシステム導入までをサポートするプロフェッショナルサービスの組織を立ち上げに注力をしてきました。

上場をしているクラウドSIer企業の営業統括を担っていた経験豊かな人材をこのチームのヘッドに招聘し、動きを加速しています。

私たちの前進を示す象徴的な動きとしては、Tailor Platformで、ある大手企業が導入していたSAPのシステムをリプレイスするという案件が進んでいましたが、先日、その検収が完了しました。

これは、われわれのローコードプラットフォームでSAPという巨大なシステムを置き換えることが可能であることの証明と言えます。国産型のシステムとしてはこのような動きは初めてではないかと思っています。

――― ERPの切り替えは企業にとって一大プロジェクトであり、既存のベンダーにとっても難易度は高いと思います。なぜ、新興企業であるテイラーがそのような動きが可能だったのでしょうか。

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