国内最速ARR100億円到達へ、LINE WORKS逆転の戦略
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本記事では企業データが使えるノートのアナリストが、LINE WORKSを運営するワークスモバイルジャパン代表取締役社長 増田 隆一氏に取材を行い、国内最速でARR100億円突破の勢いを見せる急成長SaaSの背景に迫る。
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ビジネスチャットツール「LINE WORKS」が破竹の勢いで成長を遂げている。
同サービスを提供するのは、韓国IT大手NAVERなどを親会社とするSaaS企業のワークスモバイルジャパンだ。
昨年11月に同社が公表したnote「規格外と言わずして何と言う? LINE WORKSの実力!」は、6年でARR78.7億円に達したことで業界内で大きな話題を呼んだ。
国内過去最速でARR100億円到達に手をかけつつあるワークスモバイルジャパン社増田社長に知られざる同社の戦略を聞いていく。
LINE WORKSは「LINEが運営していません」
ビジネスチャットツール「LINE WORKS」はワークスモバイルジャパン社が運営・提供を行っている。
サービス名やUI等からLINE運営のサービスと認識されることが多いが、親会社は韓国でビジネスチャット「NAVER WORKS」を提供するワークスモバイルとなっており、その子会社がワークスモバイルジャパンという資本関係にある。
「Works Mobileとしてサービス開始したが、2016年にLINEとライセンス契約を結んでLINE WORKSに名称を変更した。LINEからの資本は親会社に対し一部あるが、開発チームからアプリまで全く異なった体制となっている。(増田氏)」とあくまで日本のLINEとは独立した組織であることを語っている。
ワークスモバイル立ち上げ時に、グローバルを見据えた戦略の中心に日本市場を位置付け、ワークスモバイルジャパンを設立。日本でBtoBサービスを提供するために、当初から日本にデータセンターをおき、開発を進めてきた。
現在では、同グループのLINE WORKSに相当する韓国版プロダクトを含めても、連結売上の大半を日本法人が占める。
プロダクトは主にスマートフォンを利用することを前提とした設計だ。法人向けサービスとして、チャット・ビデオ通話機能に加えて、スケジュール・タスク・データ等の管理、共有が可能なグループウェア機能やセキュリティシステムを備えている。
無償プランも提供しており、行政やNPO、学生団体や学校のPTA組織などにも採用されていることが特徴だ。こうしたビジネス目的以外のユーザーに支持されているのも、月間9,200万人(2022年6月末時点)が利用するLINEのUIを踏襲したことが大きく寄与している。
増田氏は「スマホにたくさんのアプリを入れて使い分けるのは手間。今後は建設業など、さまざまな業種で使われているバーティカルなツールとも連携してサービス領域を広げていきたい。」と今後の展望を述べている。
国内SaaS最速のARR100億円に手をかける
ARR100億円の達成は国内外でSaaSビジネス成功の一つの目安とされている。
これまで国内上場企業では、Sansanなど6社がその水準を達成、未上場企業では、昨年SmartHRがARR45億円に対しYonY+100%での成長を見せ、T2D3と呼ばれる5年間で72倍のARR成長ペースであることが明かされている。
これらに対し、LINE WORKSはさらに急速な成長を遂げ、サービス開始からわずか6年足らずでARR76億円に到達したことを昨年公表した。
そして、2022年8月時点での取材では「ARR100億円の到達までカウントダウンに入った(増田氏)」と大台の達成に手をかけていることを明かしている。
上図は、SaaS界隈では参照されることが多いグローバルSaaS企業がARR $100millionに到達するまでに描いた成長曲線のグラフだ。
注目すべきは、LINE WORKSが「単一プロダクト」かつ「日本マーケット」でビジネスを展開しながら、グローバルプレイヤーに比肩する成長スピードを誇っている点だ。
これまでの国内上場SaaSを見ても、単一プロダクトでのARR100億円を達成したのはSansanのみ*であり、限られた国内マーケットの中では、1製品でこの規模感まで伸ばせる分野は限られている。
(*freeeも達成している可能性があるが会計と人事労務の内訳などは未開示)
ラクス(楽楽精算+楽楽明細など)やサイボウズ(サイボウズOffice+kintoneなど)といった企業も複数製品の合算でARR100億円を超えている状況だ。
LINE WORKSは、1ユーザーあたりの基本料金が450円(スタンダードプラン)からの低単価なサービスながら、圧倒的な顧客数を積み上げている。
業界や規模を問わず幅広い企業に選ばれ、35万社、400万人(2022年2月時点)ものユーザーを獲得している。
これまでSaaSと言えば、自社の直販型セールスを展開することが営業戦略の王道であった。しかし、ワークスモバイルジャパンの戦略は事業開始当初から外部リソースを活用した点に成功の要因があった。
いかにしてT2D3の成長カーブを実現したか、インタビューから紐解いていく。
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