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私の戦闘力は530000です。

ボナム。

それは私の愛犬の名前だ。
正式名は韓国語で「보남(ボナム)」
私が作った韓国語の造語で
「福男」という意味だ。

響きが可愛いと思い名付けたこの名前だが
どうも周りの人に1度では伝わらないことが多い。

散歩ですれ違う飼い主さんたちや
病院に行ったとき
初めて友達に合わせたとき…

初回の方で一度で
「ボナム」と呼べる人は殆どいない。

たいてい
「え?ポナム?」や
「ボナミ?」など
どこか、おしい感じで間違えられる。

その度に
「ボナムです」というと
「あーポダミちゃんねー」とか言われたりして
原型がぐちゃぐちゃになることも、しばしば...

ボナムですと5ターンぐらい繰り返して
ようやく正しい認識がされることが多いので
その時はお互いに疲労困憊になり
名前を聞いた人を最終的には
ぐちゃぐちゃな顔にさせることになるので
「お名前はなんですか?」は私たちの難題であり
戦いでもあるのだ。



そんな中起きた最近の出来事である。
その日もいつものように散歩をさせていると
柴犬を連れたおじいが前方からやってきた。


おじいの柴犬とボナムがあいさつを交わしている際
「お名前は?」と戦が申し込まれた。

「お名前は?」
「•••(やばいなぁ) ボナムです」

「ん?」

おじいが止まった。
セミの鳴き声がうるさく響く。

「あ、、、ボ、ボナムって言います」
「ん??」

敵が、現れた….
おじいのたたずまいが、そう物語っている。
この戦いはちょっとや、そっとじゃいかなさそうだ。

こちらが既に冷や汗をかいている反面
敵の顔は、涼んだ顔で
ドラゴンボールのフリーザのように

私の戦闘力は530000です
ですがもちろんフルパワーで
あなたと戦う気はありませんからご心配なく…

(引用:ドラゴンボールフリーザの台詞)


と心の中で言っていそうだった。
(実際、私がそう感じ取っただけだが)


「ボ、ボナ•••」
と3度目の名前宣告をしようとした矢先
おじいは大きな声で



「ん?おなべ?」

と言ってきたのだ。


いきなり、口からビームを出された気がした。
おなべ?というキラーワードは私の脳を貫通させ
思考回路を停止させる。
ど、どうしたらそうなるのだ。

「•••ボナムです、ボナ(小声」


「あ!おなべちゃん?」



敵が第二形態となった。
爆風が押し寄せる、体を守っても守りきれない。
敵は、「おなべ」という単語にさらにご丁寧に
「ちゃん」とまで付けてきた。

おじいは至ってまじめなのだ。
凜とした眼差しで、この世の白を黒に全部してしまう
驚異的なパワーを持っていた。
警察側には絶対居てほしくない人材だ。

「ボナムです」
「おなべ?」
「ボナム!」
「おなべ!!」
「ボナム!!!!」

この押し問答は大袈裟ではなく
何度も繰り返したのだが
敵は、絶対「おなべ」と真面目に
返してくるではないか。

ついに私の心は折れてしまい

「あ、はい、おなべです」

と敵の意見を肯定し
路上で儚く舞い散った。


「やっぱり、おなべちゃんかー!かわいいなぁ」

敵はおなべを撫でた。
そう、私の愛犬の名前は「おなべ」
あなたが言うようにこの子の名前は「おなべ」なの。

「ばいばい、またね!おなべちゃーん」

敵は大きくその名を轟かせ
さっそうと去っていった。

ズタボロにされた私の顔は
緑色になり、眉毛からは触覚が出てきた気がした。

それからたまにそのおじいには出くわすが
そのたび気づかれないでほしいと願うばかりに
顔色が緑色になっている。

ピッコロのようになった私の顔を
不思議そうにおなべはそっと見ていたーーー。


サポートしていただきありがとうございます!サポートは全てボナム(愛犬)に還元しようと思います^^