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『ユニークライフ』シーズン1〜3

by キミシマフミタカ

 どんな人にも個性があって、それがどのような個性でも、その個性を好ましいと思う人が、必ずどこかにいるはずだ。原題は「ATYPICAL」。不定形の、不規則な、などの意味がある。主人公は、自閉症スペクトラム障害を持つ高校生サム。しっかりものの妹と、愛情過多の母親、子どもとの距離感に迷う父親、という4人家族の物語だ。

 そもそも、人が人に惹かれるとは、どういうことなのか? 高校生のサムは、人を「好きになる」という事象が、いまひとつわからない。きちんと定義してもらわないと、自分が彼女を好きなのかどうか、確信が持てないのだ。そこでサムは両親に、「愛する人」とはどういう人なのか、と質問する。得た答えを、ノートに箇条書きにする。

 1.朝起きて一番に思い浮かぶ人であること。
 2.自分をいい人にしてくれる人であること。 
 3.何かが起きた時、一番に報告したくなる人であること。
 
 言われてみれば、確かにその通りだと思う。愛情の要素がうまく入っている。この3条件を確認したサムは、友だち以上、恋人未満だと思っていたガールフレンドのことが、「好き」なのだと気づき、相手にそれを伝えるだが、もちろんうまくいかない。
 マニュアル通りにいかないのが、人間の行動であり感情なのだ。でもサムはそのことが上手く理解できず、苦悩する。だが、両親たちは両親たちで、人間はマニュアル通りにいかないと理解していても、夫婦関係は破綻しかけ、人生は袋小路に陥っている。

 身近に、自閉症スペクトラム障害を持つ人がいるので、サムの行動はよくわかる。思ったことを、そのまま口にして行動してしまうために、周囲に軋轢を生み出す。その行動に周囲の人たちが振り回され、疲弊しながら生きてゆく姿も、なじみ深いものだ。

 こうした状況に、周りの人々はどう折り合いをつけていけばいいのか。そもそも、折り合いなどつくものなのだろうか? このドラマは、そうした試行錯誤のドタバタを、肯定的に描き出し、有益なヒントを与えてくれる。不定形の、不規則なものが生み出す、豊穣さ、それに価値を見出すことが、共存の方法なのだ———と。ある意味、私たちは誰もが、不定形で、不規則な存在なのだ。そんな当たり前のことに、気づかされる。


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