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月島軍曹の人生って何なの!?

月島基の人生って何なの!?

ねえ!?

何!?何なの!?

怖いよぉ!!

1.怖くないよ

月島軍曹が取った選択について、落ち着いて考えてみましょう。

アニメ「いご草」回放送記念として、自分用に月島基という人物について少し整理をしようと思います♪


※ゴールデンカムイ232話までのネタバレを含みます↓↓↓




月島軍曹の過去に関係する回は149話「いご草」150話「遺骨」210話「甘い嘘」231話「出産」232話「家族」の五つ。

さて、210話の「甘い嘘」を読んだあと、読者が感じる最大の謎は

「いやなんで鶴見にしたがってるん?」

でしょう。そうでしょ。違います? 私はそうでしたけど? 

だっておかしいでしょう。彼は自分が鶴見中尉に(二重に)騙されていたことを知ってるし、結局いご草ちゃんの生死は不明なわけです。

そんな状況で、死刑囚だった自分を救ってくれた鶴見中尉への恩義だけで全てを納得し、彼に尽くすことが出来るのでしょうか?

一体どんな心の動きがあれば、戦後になって全てに気がついた後に「鶴見劇場をかぶりつきで観たい」にたどり着くのでしょうか?

結論から言うと、彼は納得なんてしていないんだと思います。210話の時点では。

231話、232話を経験するまで、月島基は完成されたようでいてとても不安定なキャラクターだった。自分の中の不安定な部分を押しつぶして何とか「鬼軍曹」をやっていたのです。

その不安定さ、未消化の蟠りが噴出して浄化されるのが231話、「出産」の回だったというわけです。


では、最初の問いに戻りましょう。

いご草ちゃんについて納得できていない状態で、なぜ月島軍曹は鶴見中尉に病的なまでに献身的に従い、その手を汚し続けたのでしょうか? 彼がされたことを考えれば、尾形のように造反していも不思議はないのに。

鶴見中尉の策略(果たしてどこからどこまでが策略なのか読者も月島もわからないのが怖いところです)によって「いご草ちゃん」という生きる希望を奪われた、戦後の月島軍曹が取れる道は二つあったと思います。

①鶴見中尉を憎み造反する(=いご草ちゃんへの気持ちを持ち続ける)

②すべてを諦めて軍人として生きる(=いご草ちゃんのことを忘れる)

特筆すべきは、この分かれ道の前に立たされた月島軍曹が「戦争を経験していた」という点です。キャラクター同士の繋がりばかりに注目していると、彼らが経験した戦争というものの苛烈さ・凄惨さを忘れてしまいがちです。

九年間、月島軍曹は鶴見中尉と共に軍人として戦いました。その中で死んでいった仲間たちを大勢見たことでしょう。

鶴見中尉は言います。

「誰よりも優秀な兵士で 同郷の信頼できる部下で そして私の戦友だから」(150話)
「満州が日本である限り、お前たちの骨は日本の土に眠っているのだ」(150話)

騙されたと知ってなお、月島軍曹が鶴見中尉に従うその心の動き。私たちに理解できるわけがありません。なぜなら私たちは戦争を経験していないからです。

一緒に戦ってきた上官に「戦友」と言われるその重みも、死んでいった仲間たちを日本の土に眠らせてやりたいという気持ちも、正直私はさっぱりわかりません。だからってこんな自分の一番大事なものを奪った(かもしれない)人に従うか!?と思ってしまう。

しかし、150話で寅次の代わりにソリに乗せられ、遠ざかる中で寅次と彼を抱える杉元から目を離さない月島軍曹……

真面目で自己肯定感の低い彼が、たとえ自分が騙されていたと知っても鶴見中尉に従って②の道を選択するということは、想像に難くないでしょう。

だから彼は小樽の海に彼女の髪を捨て、1人の軍人として、鶴見劇場の観客(兼裏方)になった……

一番大切なものを捨てたのですから、もう彼に怖いものはありません。むしろ大切なものを捨ててまでこの道を行くのだから、誰よりもストイックに、鶴見中尉に忠実な兵士にならなければ意味がありません。

そういう経緯で彼はいご草ちゃんの生死が気になる自分、納得できない自分を殺して汚れ役に徹してきたのです。

231話で「あの子は…」とインカラマッに呟いた月島軍曹の表情を見た時、私は初めてこのキャラクターの本当の顔を見ることができたのではないかと思いました。泣泣泣泣泣泣泣泣 こんなん泣くって泣泣泣泣泣泣

にしてもほんと…鯉登少尉に出会えてよかったネッ^_^ ☆

2.じゃあ鶴見中尉は?

さて、月島軍曹はそんなふうに鶴見中尉に振り回されまくって感情をめちゃくちゃにされて彼の求めたままの忠実な兵士に変えられてしまったわけですが、鶴見中尉の策略の方にも疑問は残ります。

鯉登少尉に対する鶴見劇場は(彼の単純さに比例してか)大変わかりやすかったですが、月島軍曹に対しては何でこんなにわかりにくいことをしたんでしょうか?

現状月島軍曹の過去について、どこからどこまでが鶴見中尉の仕込みなのかは不明です。

しかし、仮に全てが鶴見中尉の描いた脚本通りだとしたら……

鶴見中尉のやりたかったことは、月島軍曹の生きる理由を「いご草ちゃん」から「自分(+死んでいった仲間たち)」に強制的に変えさせることなのではないか、と思います。

最初読んだとき私は、

「なんで鶴見中尉は、奉天で月島軍曹にわざわざネタバラシ(真偽不明)をしたの? 別にそのまま『いご草ちゃんは生きており、東京に嫁いだ』という話を信じさせ続けてれば良くない?」

と思っていました。しかしおそらく、それだけでは不十分なのです。

いご草ちゃんという一番を捨てない限り、鶴見中尉は永遠に二番のまま。

これから金塊争奪戦に身を投じる自分の部下として、「愛する彼女がどこかで生きている」という人間味のある希望を胸に戦う月島軍曹では困るわけです。徹頭徹尾、自分のために尽くす狂った兵士でなければ。

そのために鶴見中尉は「いご草ちゃん生きてる説」をみずから覆し、今度は「いご草ちゃん生死不明シナリオ」によって月島軍曹に人間らしい愛のすべてを諦めさせたのです。

ここで興味深いのは、鶴見中尉は他のキャラクターに対しては相手の人間的な感情(愛)に訴えることで自分の親衛隊にしたけれど、月島軍曹に対してだけは人間的な感情(愛)を奪うことによって自分に忠実な兵士を作り上げているという点です。

奉天前の九年間で、「月島軍曹がもしいつか自分を裏切ることがあるとしたら、その理由にはきっといご草ちゃんへの愛が関係してくるはずだ」と鶴見中尉は考えたのではないでしょうか。

いわば機械のバグの原因を取り除くように、月島軍曹の人間味と一番直結しているいご草ちゃんを、強制的に彼の脳内から排除する。

そのような狙いで、鶴見劇場・月島編はあまりにも壮大な仕掛けで描き出されていったのではないでしょうか。

全ては鶴見中尉の掌の上です。父親を月島軍曹が殺したのも、それによって証人が消えて真相を知ることができなくなったのも、全て鶴見中尉の描いたシナリオ通りなのでしょう。(←これは私の想像ですが)(でも絶対そうだよ)


はあ………

"解(わか)"っちゃいました?

そう考えると…鶴見中尉ゎもはゃ……

神……てことを…さ…(^^;; 笑


「鶴見中尉殿スゴ〜〜イ!!」(210話)


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