ドイツのアクセシビリティ事情ちょっとだけ

[European accessibility act(欧州アクセシビリティ法、以降EAA)]の公布により、EU加盟各国ではアクセシビリティに関する国内法の整備と、それを見据えた諸対応が進められているところと思います。

この記事では、直近のドイツのアクセシビリティ関連の動きについてご紹介します。

「マインツ宣言(Mainzer Erklärung)」採択

2020年11月末に、第60回連邦および州の障害者委員会会議(der 60. Konferenz der Beauftragten von Bund und Ländern für Menschen mit Behinderungen)が開催され、EAAおよび国連障害者権利条約を前提とした、メディアコンテンツへのアクセシビリティ対応促進を求める「マインツ宣言」が採択されました。

宣言は、大きく以下の4つから構成されています。

* ビジョン2025(Vision 2025)
    * 2025年に向けてのコンセプト
* インクルーシブかつアクセシブルなメディア世界への道(Wege zu einer inklusiven und barrierefreien Medienwelt)
    * ビジョン達成に向けてのこれまでとこれから
* 国連障害者権利条約要求事項(Auftrag aus der UN-Behindertenrechtskonvention)
    * 文字通り。
* アクセシブルかつインクルーシブなメディアのための10項目のプログラム (Unser 10-Punkte-Programm für barrierefreie und inklusive Medien)
    * EAAを前提とした対応予定項目

これらの中で、

* 情報保障は、障害者が平等に社会参加する(あるいは社会参加を促進する)ために、デジタル情報を利用しアクセスできることは基本的な権利であること、
* マスメディアが提供するテレビやラジオ番組のようなコンテンツや、ストリーミングサービスやオンラインショッピング、ソーシャルメディアなど、包括的にメディアコンテンツへのバリアフリー対応が求められること

が表されています。
EAA前提ですので民間業者の対応も求められますし、現在の法規制では不十分なところを改善するために、施行済のメディア条約(Medienstaatsvertrag)のバリアフリー対応に関する追加規制の検討の予定があるようです。

もともとBITV 2.0(Barrierefreie-Informationstechnik-Verordnung バリアフリー情報技術規則)ではウェブサイト以外にモバイルアプリケーション、デジタル対応の管理プロセスなどを対象としていて、EAA対応のために国内法を改正するとしてBITV 2.0よりも対象が緩やかになることは考えづらいため、当面、ドイツのWeb制作会社をはじめとして、コンテンツ制作などメディア関係者は技術やコストも含め多くの対応を求められることになるでしょう。

ただ、その対応は、例えば障害当事者がアドバイザーやチェッカーとして制作に参加する機会や、コンテンツを利用可能な人が増える(ドイツの障害者は約800万人、人口は2020年9月当時で8300万人)というように、さまざまな機会を作り出すものだと思います。
社会のシステムを変えるチャンスとして、EAA対応が効果的に働くことを願いつつ2020年をしめくくろうと思います。

参考リンク)
Medien gefordert: Behindertenbeauftragte von Bund und Ländern verabschieden die „Mainzer Erklärung(プレスリリース)


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