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備忘録37 特別という呪縛

部屋の大片付けをしたら、大量の紙ゴミが出てきた。

高校生の頃の教科書、参考書、過去問、過去の模試、その他諸々をあたしは未だにとっておいていたらしい。

過去の栄光に縋っていたんだと思う。
昔は誰よりも頭が良くて、自分は人より知能が高い、努力のできる人間だと思っていた。

でも今は違う。

あたしは誰よりも頭が悪く劣っていて、何も出来ない、この世でいちばん要らない種の人間だと思う。

何より、あたしはこうも自分が悪くて劣っていると思っているのに、プライドだけは一丁前で負けることが嫌いで自分に厳しく時に甘すぎる、いちばん厄介な人間だ。

そう、世間ではこういう人間を「エゴイスト」と呼ぶ。
あたしはずっと、焦点が自分に当たっている。

と私は思っているけど、それともう一つ。
あたしは自分の客観視が著しく苦手だ。

友達は、あたしをいいように見すぎていると思う。

みんな優しくてとてもいい人なんだと思う。
馬鹿にしてるわけではなく。

みんな、人を判断するのが上手で、人を見抜くのが上手だと思う。
みんなは私のことを「気が使える人間」だと思っているけど、そんなことはない。

あたしは宮城を見て育ったから、アヒルの子供のようにそれを真似しているだけだ。

決してそれはあたしの素材の味なんかじゃない。
だし、人類全員気にしようと思えば気にできることだ。



そう、あたしはね、特別になりたいの

誰かに特別だと思われて生きていたいの。

この願いのような呪いは、あたしの人生をずっと、ずっと縛って、動けなくしている。

たとえば、なんでもいい

あたしのことを、出会ったことがない、こんなの初めてだって想ってくれる友達、恋人がいれば。

あたしに、世間が認める才能があって、世界を飛び回る天才だったら。

もっと小さな規模でいい。
会社で、一目置かれる存在になれたら。
スーパー1年目だって、思ってもらえたら。

そんな些細なことでよかった。
誰かの人生に少しでも刻まれるような人間になりたかった。


そう、なりたかったんだよな


うん、でももうなれない。


気づけば大人になってしまったから。


あたしの特別は、もう枠がいっぱいだから。


思い合う特別にはもう誰もなれないし、あたしが特別だと思う人は、あたしのことを同様に想っちゃいない。


もうどうでもいい気がする。なにもかも。


死ぬまであそんで生きてやろうと思う。


全てが終わってしまっている気がする。
言葉にならない何かに気づいてしまった気がする。


ひとことで言えば、それは"終わり"のようなもの。
何を考えるにしても、最近は全てに終わりの想像が付き纏ってきて、あたしにひそひそと囁いて、永遠などないと気付かされる。


愛には常に終わりがある。

だからもう仕方ない。終わればいい、早く。


あたしは最近、こんなことを夜に考えてから、糸が切れた操り人形のように眠って、朝を迎えている。
もちろんいい夢なんて一つも見ない。

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