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切り捨てて雨

ネイルが所々禿げてしまって、爪の上が雨が降った翌日の世界をうたっている。角度を変えるといっそう光を増すソレに私は夢中だった。
でもそろそろ落とさなくては。この爪であなたの手は握れないのだから。

爪も髪も毎日丁寧に手入れされているのに、ある日突然切り捨てられてしまう。私にとってあなたが爪のような存在ならよかったのに。
けれど私が爪であったら、と考えるだけで少し呼吸が浅くなる。
切り捨てるなら優しくなんてしてほしくなかった。綺麗に切り揃えられた爪と同時にのびてくる骨ばった手を、振りはらうことなんてできるわけがない。
握った私の手をそっとひと撫でするあなたは純白な悪魔に見えました。

水たまりをふきとって新しい色を纏おうとする私が馬鹿なことくらい分かっているけれど、伸びた爪をパチンと切るなんてできっこないのです。
消えたはずの水たまりはなぜかまた、そこにあった。
泣きたくなんてなかったのに。

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