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妖怪まるかぶり姫

洋服遍歴というより、出会う人との攻防戦が気を抜けないの。

ローラアシュレイベネトン・ポールスミス・ポールアンドジョーアニエスベーバーバリー(昔あったブルーやブラックじゃない)・ジルスチュアートヴィヴィアンタムヴィヴィアンウエストウッドナラカミーチェ  (順不同)※洋服を撤退しているものも多数。

自分の節操のなさよ・・・そんな自分に数年毎ににちょっとした呪いがかかる。それは、妖怪まるかぶり姫に憑りつかれてしまうこと。


女性ならあるある案件なんだけど、男性は多分そもそも気にしないのか、はたまた格好の種類が少ないってのもあるからだろうか。

話をすすめて
クリスマスイベントがべらぼうに毎週あった若かりし頃、その頃から洋服雑誌をほぼ5から6冊読むほど洋服好きの自分。家庭画報からはじまりセブンティーン辺りまでとかく洋服メインの雑誌を見る。

自分なりのトレンドが出来上がる。(雑誌のままじゃないのが微妙だが)
今年はレザーアイテム。色はピスタチオグリーン・淡いブルーなどなど
脳内で勝手にコーディネートが作られていく。

職場に少しずつ新しいアイテムを投入してみたり、一気に上から下まで揃えてデビューしたりする。更衣室やフロアで「何処ぞのさんそのブラウス可愛い~」とか「スカートいいねー」などお互いを褒め称えあう。それが女子の嗜み。

そんな女子女子していたクリスマス月ある日、
職場でまあまあ話をする子が聞いてきた。

「それいいね。どこで買ったの?」
「三越に入っているポールスミスだよ?」

自分の経験則で言うけど、「それどこで」って聞いてくる場合は用心なんだ。因みに安心回答はこちら「それ可愛い。そんな様なの欲しいなぁ。」

購入店舗を聞いてくる場合はほぼ2択だ。

色違いはあるのだろうか?
同じものがまだ売っているのかどうか?

こんな話も側から聞けば、『自意識過剰?』と思うだろうと静観していた。ある人が指摘を周りにしてくれるまでは。

だって既製品だからね、しかも雑誌を見ている訳だし。被るの普通だもん。

話を職場に戻して
割とこぎれいな同僚男性が居た。仮に伊藤さんとしよう。
伊藤さんは影でモテる一番厄介な男性だった。女性がキャーキャー言う場合殆どそれは対象外の烙印を押されている。何故ならキャーキャー言ってもいい人なんだよ。モテている人ほど実はどうでもいい人なんだよね。

そんなダークホースの伊藤さんは自分とプライベートをそこそこ喋る程度の仲だった。その当時まだブームですら無い時に輸入自転車を乗っていて、ポールスミスの洋服を着ている自分に「その人自転車の選手だったよね」と話しかけてきたことがきっかけ。似合うねと普通に話してくれるので要らぬお世辞じゃないなと安心して洋服の話が出来た。そしてその彼もポールスミスを密やかに取り入れていた。

さて、「それどこ」と聞いてきた彼女(それどこさんと呼ぶ)がボーナスが入った翌週の月曜日の朝着てきた洋服は、紛れもなく自分と同じものだった。自分よりはるかにスタイルが良くて可愛い彼女は明らかに様になっていた。みんなは正直自分の服装なんて覚えても居ない。

「やー可愛い似合うね!」「それいいね!」「かっこいい」

あー。自分の内なる何かがつぶやく。そうして更衣室に入ると彼女が笑顔で言う「すっごい好評だったよ!教えてくれてありがとう」
間髪入れず自分のバックを見て言う。「それどこの?」「・・・」答えたくないとは言えない雰囲気。周りには女性社員が沢山居る。

「かねまつ」と、答えるとへーと言う。そして値段を聞いてくる。
「4万円位」と答えたらカチリと彼女のロックオンの音が聞こえた。

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その当時、実質堅実お見合いパーティーと呼ばれていた会社や関係会社合同クリスマス会の頃にはすっかり彼女は自分になっていた。というか逆転していて私が真似しているようにすら見える。

関係会社合同クリスマス会当日、彼女とまるで同じにみえるチョイスの自分はチキンだったので、そそくさとコートを羽織る。コートは古いマックスアンドコーなのだが中の洋服に変にぴったりだった。

会場でコートを脱ぐと、ほぼ同じな彼女が立っている。違う部署の課長が自分に声をかけるが彼女じゃない事に気付き、とうとう呪いの呪文を唱えてしまった。

「なんだ何処ぞの君か!それどこさんかと思ったよ!何処ぞの君も真似ばっかりしていないでもっと自分に似合う服を着なきゃ!」

周りの社員もうんうんと頷く。一人からはあなたは地味なんだからもっとおとなしい柄の服を着たほうがいいわよなんて言われる始末。

ドリンクとサンドイッチを取ると、そそくさと壁の方に向かう。

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すこしすると、伊藤さんがやってきた。お互いの年末年始について語りあっていたら、それどこさんと仲間たちがやってきた。それどこさんと伊藤さんが並ぶとまるでカップルにも見える。周りもそれに気づいてお似合いと冷やかす。

自分は早くこの場から逃げねば話を振られるに決まっている。
じりじりと出口に向かい静かに立ち去ろうとしたら

「何処ぞのさんと同じ服じゃないか!!何処ぞのさん真似はダメだよ」と
接点まるでないのにメンドクサイ噂だけ聞く男性社員に大声で言われる。

固まる自分・・・。どういえばいい?と悩んでいた自分に

「何処ぞのさんは前からそのブランドのファンでよく着てるよ?」
「完全に彼女が後追い。何処ぞのさんに失礼だよ。それに彼女はこれを着こなすセンス無いし、スタイルだけで、さして似合ってない」

そう、伊藤さんが助け舟を出してくれたのだ。
しかもトドメを刺しにきた。

良い話でしょ?

その後伊藤さんと自分はどうなったのかって?

答えは既に出てるでしょ?

タイトルなし2

そう、彼女持ちなのを随分前から知っていたのだ。だから厄介だったのだ。
本人が周りに言わない限り、他人の個人的な話をしない自分だから聞かれても知らないしか言えないから


そんな頃から随分経ったけど、またもやこの歳で妖怪まるかぶり姫に憑りつかれてどうしたものかと悩んでいる。









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