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俳句幼稚園 血相

バブル時代には取引先のとても偉い人が
渡し切り交際費を思う存分使って
銀座のお寿司とかそういうのの
おこぼれを頂いていた。
上司も渡し切り交際費を限度まで使い切る
猛者だった。

自分は彼等の行く末を案じて
皆の様には平気で今度は料亭!とか鞄を買えとか
その手の事はしないので、逆に敷居が高い時など
お呼ばれされていた。

決算期も終わり、書類整理の予定表など
軽く書いて手順を考えていたら
珍しく自分にお声が掛かる。

行くとお客様以外の人もいて
これはと用心した。
人一倍怖がりで人見知りの自分は
兎に角下手な事には口出ししないを決める。
それが例えお天気の話でも。

元々代々資産家の上司は
マンション経営をはじめていた。
出物があると言う話を取引先から聞いて
その話がメインだったのか
取引先の人とその不動産屋さんもいた。
食事には自分ともう1人可愛い他部署の子も居て、
お茶濁しは彼女にお任せしていた。

ぷっくりと血色のいい不動産屋さんは
笑顔で雑談しながら上司にぐいぐいと
下部にキャッチフレーズ付きの茶封筒を渡すと
早く開けてご覧なさいと催促の目線を送る。

笑いながら「ここじゃあ」と言いながら
封筒から少し書類を引き上げる。

はっきりとは見えないが、金額には確実に
0だけでも9個並んでいた。

目の前のどじょう鍋をどうしたものやらと
突く上司にかける言葉は見つからない。




箸先は戸惑いつつくどぜう鍋
はしさきは とまどいつつく どぜうなべ




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