オタール・イオセリアーニ映画祭5:「四月」をみて

集合住宅で暮らすカップルと近隣の住民の生活に焦点を当てた全編モノクロ映画です。
映画のテーマは、人間にとっての豊かな暮らしとは何だろうと問いかけのように感じました。

冒頭で紆余曲折ありながらも、丘の上にある樹の下でめでたく結ばれたカップルは、新居に引っ越し新たな暮らしを始めます。
引っ越し先の空っぽの部屋では物質的には満たされずとも、2人で愛を囁きあうことに時間を費やしカップルは仲良く暮らしていました。

時が過ぎカップルの部屋には家具などが増えてきました。ものが増えたことに伴い、手入れなどやることが増えていきます。
そして、ささいなことから始まる喧嘩が絶えないようになってしまいます。

終盤、カップルを含めて近隣の住民は家財を窓から捨ててしまいます。そして、カップルが結ばれた場所で再び愛を誓いあうシーンで終わりました。

この映画のように、ものに満たされた生活が人間にとって本当に幸せなのかといったテーマは、さまざまなものが普及するにしたがって、何周かしているように思います。

ものを所有することを時代として考えると、映画で登場した家具や扇風機、グラスなどの家財道具を所有する時代からラジオやテレビなどが導入されました。
現代では、個人向けのデバイスが発達していて、過去のように多くを所有したがために時間を費やす必要があるのではなく、見方によっては延々と時間を費やすためのものといえるのではないでしょうか。

現代の感覚からすれば、何もない部屋で1日中愛を囁く毎日とは、贅沢な時間の使い方であったり、非日常的な過ごし方と感じてしまいます。

スマホやパソコン、テレビやラジオなどをまったく触らない日はあるか、そしてそんな未来が想像つくかと考えると難しいです。こうした中で、人と一緒にいるときどんなふうに時間を過ごすのか、それによってより豊かな生活を送るにはどうすればいいのかと考える機会になりました。


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