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「2023年3月の名前のない珈琲 Ethiopia:ありがとう、またね。」

人生のなかで、また、会いたい人というのは何人いるのだろう。

❏❏❏

3月の名前のない珈琲:Ethiopia

❏❏❏

実におもしろい。

某テレビドラマの決め台詞が頭によぎり、一人で笑ってしまった。

そのせいで、3月の名前のない珈琲を淹れたカップが小刻みに揺れた。
幸い、珈琲の半分以上は、すでに、喉を通り過ぎていたから、珈琲がカップからこぼれることはなかった。

珈琲くるるを始めてから、数年が経つけれど、なぜか、節目に同じ国の豆を焙煎している。

Ethiopia。
しかも、大抵、ウォッシュドだから、実におもしろい。

これは、以前から、珈琲くるるのことを知ってくださっている人なら、一度は耳にしたことがある話だ。

珈琲業界に足を突っ込んだきっかけは、上京したときに、代官山の小さなコーヒーショップで働いたことにある。

何気なく受けたコーヒーショップの面接に受かり、初めて、そのコーヒーショップで飲んだ珈琲に驚いたことを今でも思い出す。

澄んだ柑橘系の香りと味に惚けた。
Ethiopia、ウォッシュド、シングルオリジンという店長からの説明に、頭の中にハテナを浮かべながらも、珈琲のおいしさの幅が広がったことを感じていた。

このおいしさをひとりでも多くの方に届けたい。
そんな思いを共有していたのが、一緒に働いていたSさんだ。

基本、ワンオペ。
午前担当Sさん、午後担当わたし。

交代制のため、ふたりで店頭に立つことはほぼなかったけれど、店やそれぞれの時間帯のお客さまについて、Sさんと情報を交換しながら、いろんな相談をした。
ふたりしかいない職場だったから、一緒に働く相手が信頼できる人だったということはとても恵まれていたと思う。

何事もはじめというものはとても肝心なのだ。
毎日、コーヒーショップでSさんと共に楽しく働いていたわたしは、まんまと、珈琲業界に浸かり、今や、珈琲豆を焙煎している。

数年前には考えてもいなかった道をどんどん進んでいる。
人生なにがあるかわからない。

Sさんとは気が合っていて、とても楽な間柄だった。
ふたりで、いろんなところに遊びに行っては、怒涛のコーヒーショップ&カフェ巡りをしまくった。

2023年3月、西へ帰ってしまうSさんに、「また、会おうね!20年後になるかもしれへんけど!」と言って、笑いながら手を振った。

「さよなら。」ではなく「またね。」

3月の名前のない珈琲:Ethiopiaを飲みながら、すっきりとしたその味わいに、この数年間を思い出して、微笑んだ。
Ethiopiaの珈琲とともにあった感謝してもしきれないくらい楽しい数年間。

この珈琲に名前をつけるなら、「ありがとう、またね。」だろう。

今、会えなくなったことの悲しさよりも、未来に会えることの楽しみの方が大きいとは…。
実におもしろい。

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