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シネ・ヌーヴォの歴史④

「上映の2つの柱」

当館は、特集上映とロードショー上映を2本柱に、これまでに上映した作品は8000本にものぼります。これは関西屈指の上映本数で、多彩・多様な映画を上映してまいりました。
 
とりわけ特集上映では皆さま様から大反響をいただいております。オープンした1997年に「侯孝賢レトロスペクティブ」「ジャン・ルノワール映画祭」、翌年の「キアロスタミ映画祭」「ノルシュテイン祭」「ロシア映画秘宝展」に続き、同年夏には第1回日本映画大回顧展として「成瀬巳喜男レトロスペクティブ」を開催。劇場で上映可能なすべての成瀬作品計40本を一挙上映し、関西の映画館としては初の本格的な作家特集となり、満席続出の大反響となりました。以来、毎年夏は日本映画の大特集を企画、翌年は「追悼・宮川一夫」45本、2001年は「川島雄三 乱調の美学」40本、2002年は「女性映画の名匠 中村登の世界」38本と開催。


観るからには1本でも多く! それは映画ファンの欲望そのもの。多様な作品の中から、その監督ならではの世界を発見し、ある映画を観ることで次の映画への深い理解にもつながる、そんな映画ファンの思いを実現する場として開催してまいりました。同時に、若き映画ファンが初めてその映画を観る発見の場としても、これまで開催を続けております。2003年の「映画監督・深作欣二」50本上映の際は、監督をお招きするつもりが突然の逝去となり、また東京で同時開催していた三百人劇場さんと一緒に追悼する思いから、ニュープリント費用に採算をはるかに超える予算をかけたために、結果は膨大な赤字となり、館が潰れる寸前まで行きましたが、融資で事無を得ました。しかし、「観たい! 観せたい!」一心で、その後も1本でも多く特集上映を開催してまいりました。


その後の特集上映は「高林陽一の世界」「中平康レトロスペクティブ」(共に03年)、「生誕百年・小津安二郎の藝術」(04年・37本)、「遊撃の美学 映画監督・中島貞夫」(04年・20本)、「渋谷実と前田陽一」(05年・23本)、「土本典昭フィルモグラフィ展」(05年・46本)、「映画監督・野村芳太郎」(06年・25本)、「松竹110周年祭」(06年・43本)、「追悼 映画監督・黒木和雄」(07年・28本)、「新藤兼人リスペクト」(07年・37本)、「追悼 映画監督・市川崑」(08年・60本)、また洋画では「コリア映画祭2000」(40本)、「ベルイマン映画祭」(03年・28本)、「中国映画の全貌」(04年・48本)と特集上映を続けています。
 
他に特集した企画は、沢島忠(20本)、豊田四郎(20本)、石井輝男(18本)、今村昌平(全作品)、キェシロフスキ(29本)、田中徳三(15本)、岡本喜八(39本)、宮島義勇(23本)、小林正樹(13本)、今井正(25本)、森繁久彌(50本)、浪花の映画大特集(50本)、黒澤明(全作品)、谷口千吉(20本)、高峰秀子(34本)、淡島千景(18本)、増村保造(30本)、小國英雄(23本)、羽仁進(20本)、他に小川紳介、寺山修司(5年置きに開催)、井川徳道、浦山桐郎、小栗康平、原一男、李香蘭、原節子、織田作之助、若尾文子などなど多種多彩。その後も2016年は、生誕百年 映画監督・鈴木英夫の全貌(23本)、芦川いづみ映画祭(14本)、生誕百年・加藤泰の仕事(26本)、松本雄吉追悼特集(18本)、角川映画祭(26本)、2017年は20周年記念として黒木和雄(16本)、東陽一(24本)、キアロスタミ追悼特集(13本)、溝口&増村映画祭(33本)、鈴木清順追悼特集(13本)、ロシア・ソビエト映画祭(23本)、生誕101年・小林正樹映画祭(22本)、生誕90年・蔵原惟繕(34本)、荒井晴彦映画祭(11本)、松山善三+高峰秀子(24本)、倍賞千恵子(16本)、おとなの大映祭(21本)、2018年は大映女優祭(26本)、生誕80年・大林宣彦映画祭(38本)、追悼・松本俊夫(15本)、フィルム・ノワールの世界、大映男優祭(45本)、名画発掘リクエスト特集(17本)、台湾巨匠傑作選、ATG大全集(44本)、小津4K、生誕百年・橋本忍映画祭(20本)、没後10年・市川準映画祭(15本)、2019年は華麗なるフランス映画、イタリアクラッシコ映画祭(10本)、ロシアン・カルト(10本)、京マチ子映画祭(32本)、ソクーロフ特集(15本)、ATG外伝&追悼ショーケン(22本)、米寿記念・篠田正浩(29本)、フレデリック・ワイズマンのすべて(22本)、名画発掘リクエスト特集vol.2(22本)、2020年は市川雷蔵映画祭(40本)、川島雄三 乱調の美学(30本)、追悼・八千草薫(17本)、渡哲也映画祭(16本)、若尾文子映画祭(41本)、コロナ禍で休館後の7月から没後50年・内田吐夢(25本)、生誕百年・田中徳三(18本)、2021年は生誕101年・野村芳太郎(20本)、松竹メロドラマの系譜(32本)、奇想天外映画祭(20本)、浪花千栄子特集(15本)、ホウ・シャオシェン特集(19本)、一周忌追悼特集・森﨑東(27本)、妖怪特撮映画祭(30本)、東宝青春映画の系譜(22本)、野村惠一監督特集(5本)、2022年は生誕百年・三隅研次(27本)、没後30年・小川紳介監督と小川プロダクション(22本)、奇想天外映画祭3(14本)、映画監督・女優 田中絹代(8本)、上野昻志による異貌の日本映画史「黄昏映画館」(20本)、時代劇が前衛だった(13本)、没後30年・太地喜和子(6本)、大映4K映画祭(48本)、追悼・大森一樹(20本)、生誕百年・丹波哲郎(17本)、そしてこの夏開催の生誕90年・岡田茉莉子(27本)と当館の看板シリーズとして上映を続けています。
 


その他、たびたびインド映画祭を開催したほか、ベトナム映画祭、ブニュエル特集、ヘルツォーク特集、大阪〈生きた建築〉映画祭、タヒミック特集、ベルトルッチ追悼特集、クリス・マルケル特集、空族特集、ジョージア[グルジア]映画祭、キム・ギヨン特集、ムーラー特集、デニス・ホッパー大会、セルゲイ・ボンダルチュク特集、小田香特集、リム・カーワイ特集、フェリーニ特集、小森はるか特集、タルコフスキー特集、香港インディペンデント映画祭、ケリー・ライカート特集、ジム・ジャームッシュ特集、作家主義 相米慎二、堤幸彦監督特集、現代アートハウス入門、濱口竜介特集、ナワポン・タムロンラタナリット監督特集、柳町光男監督傑作選、アピチャッポン・ウィーラセタクン特集、レオス・カラックス監督、チェコアニメ特集、山中貞雄現存3作品、ジャック・リヴェット映画祭、シャンタル・アケルマン映画祭、フランス映画祭、森田芳光70祭、クロード・ミレール映画祭、追悼 ジャン=リュック・ゴダールなど、邦洋を問わず映画史に残る名作から映画ファンを虜にする作品群、新進の若手作家の特集まで幅広く上映しています。
 


夏恒例の日本映画大回顧展などの特集上映は、かつては東京・三百人劇場さんのご協力をいただいての開催でした。特集上映をする意義もご享受いただきながらでしたが、三百人劇場さんは2006年に閉館。以来、その志を受け継ぎながら、シネ・ヌーヴォ単独で企画を続けています。

また「シネ・ヌーヴォ名画発掘シリーズ」「フィルム・ノワールの世界」「奇想天外映画祭」など、これまでに上映してこなかった監督・俳優の作品、またベストテンや映画史からは見捨てられた不遇な作品、それでいて必見の秀作を発掘する新シリーズとして、皆さまの熱いご支持をいただき好評開催いたしております。


 
次回シネ・ヌーヴォの歴史⑤は「維新派がつくった映画館」です。
 

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