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【理系大学生・大学院生向け】走査型電子顕微鏡(SEM)に関する地味でリアルなお話

今回は、走査型電子顕微鏡(以下、SEM(通称:セム))に関して、参考書やHPには載っていない地味でリアルな話をしたいと思います。私自身学生時代にSEMを使っていましたが、SEMという装置の全体像を把握できていなかったように思います。その頃を思い出しながら、こういう事が知りたかったなぁという事を実際に仕事で使った経験を踏まえて記事にしました。

※1.理解のため、詳細を省いたり、正確な表現ではない部分もございますのでご注意願います。
※2.サラリーマン的に、画像の引用等は非常に気を使うので、文章のみの説明となりますがご容赦下さい。

1.SEMとは
→電子線を測定物に照射し、そこから放出された電子を検出し、画像化する装置です(一般的な使用方法では)。ここのポイントはそもそも電子線とは何やねんという話ですが、日常生活で使われる電流は電子の集まりで、金属の中にいますが、真空中で金属を加熱したり、電界を印可することで、金属の外に飛び出すことができます。この電子を放出する部品を電子源と呼び、放出された電子は電子線と呼ばれます。

2.SEMの種類
→SEMの重要な性能の一つに分解能があり、今回分解能によってSEMを分類しました。非常にざっくりですが、SEMの分解能は電子源の性能によって左右されます。電子源の種類は大きく3種類あり、①熱電子放出型②熱電界放出型③電界放出型です。それぞれ、電子源の材料として、①はW多結晶フィラメント②はW(100)単結晶③はW(310)単結晶が主に用いられます。

①熱電子放出型SEM(通称:汎用SEM)
→最もポピュラーなSEMで大学等でも使った事があるのではないでしょうか?実際企業でも出荷検査等にも使われ、誰でも簡単に使う事が出来、この汎用SEMで観察しておけば充分な事も多いです。
私は学生時代”これがSEMや!!”と思っていました。

②熱電界放出型FE-SEM(通称:FE-SEM ②③と混同される)
→①の汎用SEMと比べて、ざっくり5倍程度の分解能があり、値段も高価になります。高分解能でかつ安定して使用できることから、汎用SEMには及ばないですが、広く使われています。今となってはSEMと言えば、このFE-SEMが当たり前かもしれません。また、出荷検査というよりは、分析、故障解析等に使用される事が多いようです。

③電界放出型FE-SEM(通称:FE-SEM ②③と混同される)
→②の熱電子放出型と比べて、さらに高分解能で有機物等の観察に優れていますが、電子源起因の装置の不安定性から、企業で使用される事より大学で使用される事が多いように思います。

3.余談
SEMの話題となると、分解能最高!!みたいな話になりがちで、クライオSEMなんかも話題になりがちですが、実際には、SEMは地味に広く様々な分野で使用されています。学生時代に使っていた装置が、企業などで実際に使われる事があると思えば、研究に力が入るのではないでしょうか。

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