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はじまって、おわるんだね

2023年1月14日土曜日

午前11時
虫歯治療のために歯医者へ向かう。虫歯があることなんて知ってほしくないほど男前な人が私の担当医師。
一つ目の治療を簡単に終えた後、反対側の虫歯もついでに治療してもらうことになった。しかしこれがなかなか終わらない。遂にしみてきた。
中で結構進行しているタイプの虫歯に、麻酔が登場。さっきの2倍くらいの時間をかけて治療が終わった。

人間の心のようだ。本当にしんどい時こそ余計にそのつらさに気が付かない。自己防衛?蓋をして何事もなかったかのように生活を送っていても、仲はぐちゅぐちゅのどろどろ。心のお医者さんが常にそばにいてくれればいいのにね。私も心の傷の手当、できてるかな?


正午
駅の書店へ向かう。京都の観光雑誌に惹かれる。
京都で生活を送って2年半ほど経過した。先日実家に帰省して京都に戻ってきたとき「ただいま」と口にする自分がいた。驚いた。

読み進めていくが、知らない店ばかり。残り1年の学生生活で、社会人になったらできないようなことをもっとやろうと思えた。

午後9時
本を一冊読んだ。とても有意義な一時間だった。

午後10時
バイト先へ向かう。ムードメーカーの彼が私に告げた一言で治ったはずの虫歯が痛みそうになった。
「バイト半分首切られたらしいっす。今日連絡来ませんでした?」
私にその連絡は来ていなかった。
だけど、だけど、だけど
ありえない。驚きと一緒に怒りの感情が湧いてきた。
オープニングスタッフとして採用されてからまだ1か月と半分しかたっていないのに。明日、バイトのみんなで新年会する予定だったのに。幹事の彼も首が飛んだ。ある人は参加する意味がないから行かないといった。そりゃそうだ。
残された自分もどんな顔をして明日参加すればいいのかわからない。

さよならの一言も言えずに別れがくるの?
なんでこんなに素敵な人達を手放す選択をするの??
これが大人の事情ってやつなのか?あまりにも酷だ。

オープニングスタッフとして、一緒に店をつくりあげた仲間。
グループに分かれて接客のロールプレイを何度もした。配布されたばかりのエプロンはまだ汚れ一つついていない。サービスのサラダを配るときの常套句がようやくすらすらと出てくるようになった頃だったのに。

勤務中に交わした何気ない会話が最後になったのが悔しい。
自分を残してもらったことが全然嬉しくない。

研修初日にロッカーの使い方を教えてもらってから、自分のことを慕ってくれたあの子の笑顔が浮かぶ。残されたキッチンの彼とまだ付き合って間もない。こんなに結ばれて喜ばしいカップルはほかにはいなかった。ちなみに彼らが付き合っていることは私と彼らの間の秘密。

5000円もするワイングラスを割った時に、「俺が置いた場所も悪かったよ」と一緒に謝ってくれた彼の顔が浮かぶ。私がバイトの初任給でヘッドホンを買うと話をしたら、おすすめのヘッドホンをたくさん紹介してくれた。手の抜きどころがうまく、頭の回転と仕事覚が速く、気配りができる彼だった。

カウンターに並んで、私のずぶずぶの恋愛話を親身に聞いてくれた優しい同級生の顔が浮かぶ。朝まで飲んだ時に「俺も(私)推しでいくわ」とムードメーカーの彼と一緒に半分冗談交じりの宣言を受けた。慰めでも嬉しかった。必ず出入り口のドアを開けて先に通してくれたし、LINEでも私のことを気遣ってくれた。

ムードメーカーの彼は、いるだけで店が盛り上がった。ルックス良し、後輩力高め、1回生なのに幹事も引き受けてくれる、生粋の関西人で面白い、英語もできる、パーフェクトヒューマン。イケメン過ぎて逆にほかの女子から近づかれなくて、損してるなと思ったらめっちゃ美女の彼女さんがいた。そして、恋してる自分に恋するタイプではない彼のギャップがまた良かった。

みんな違ってみんないい。多様性を大切に。
社会の目指そうとしているところから離れている。
明日は我が身である。ひょっとして私はとんでもないバイトに手をだしてしまったのか。今、社会の厳しさを学んでいる。

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