人間交差点4号【サラリーマン金太郎】
母親「一回のATで最大1700枚出るの!?」
俺「らしいよ、一回の抽選で29連まで一括抽選だった…かな?そんくらい。」
母親「1700枚が29回くるかもしれんとか熱いな!打ち行きたいなー」
俺「退院したらねw 」
眠れないので4号機の話でもしようか。
とにかくその日は母親が死んだ。
死に際、母は父に若いからすぐ再婚して幸せになってほしいと伝えていた。
弟にはアンタは顔が良いから女だけは慎重に選んで生きなさい。と言われていた。
私はあんたは手がでかいという感想だけをいただき母親は息をひきとった。もうちょっとなんかなかったもんか。
病院を出て、親父は赤子のように泣きながら家に帰って行った。
中学生の弟は単車に跨がりメットインに入れていた1.8㍑のブラックニッカを何度か飲み、家に帰っていった。
私はパチンコ屋に行った。
スピリチュアルな話は嫌いだが、仕方ない魂だけでも打たせてやるかという謎行動に走った。
要するに実感が無かった。人の死に対する実感が。無理よ16歳の私だもの。
フラフラ~っと近くのパチンコ屋に入り、母親と話ていたサラリーマン金太郎に座りぼんやり打っていた。
飲み街にあるパチンコ屋だったから朝なのに
キャバ嬢と酔っ払いとヤクザしかいなかったボッタクリ店。
一万円札がどんどん消えた。
ATに入らない、まったく入らない。
上段に青7が止まっても、金太郎が銀座で野球拳していても、常に真顔。正直何も考えられない。
でもお金はサンドにじゃぶじゃぶ入れる。
8万円目でようやくATに入った。
ATに入った瞬間やっとボロクソに涙が出てきて声を出して泣いた。
隣で打っていたキャバ嬢と酔っ払いが泣きながらレバーを叩いている私にコーヒーをくれたが、それも鼻水たらしながら飲んだ。
おいしかった。
1700枚が29回出ろよ。出るまで終わるなよっていっぱい考えた。
150枚が4回で終わった。
真っ赤な目をして店を出て、歩いてる人間を3人くらい蹴り女友達の家に向かった。
スロットで10万負けてきたと言ったら大笑いされて、母親が死んだと伝えたら何も言わずに抱きしめられてなぜかセックスをした。
女性って優しいんだなと知った1日。たぶん負けてなかったら触れなかった優しさだ。
あの時はラッキー、くらいに思っていたあのセックスは今思えばすんごい人間臭い優しさだ。
あの日母親は死んだ。
スロットで10万産まれてはじめて負けた。めちゃくちゃ優しくされた。
サラリーマン金太郎にはこう…ちょっとノスタルジーな思い出が色々詰まっている。
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