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メイド・イン・ヘブン

今働いている会社の社員になる前、まだ内定者でもなくアルバイトとして働かせてもらっていた頃、私は毎日猛烈に仕事のことを考えていた。

将来どうなりたい、とかは決まっていないけど、とにかく毎日できることを増やしていくのが楽しくて、「次の出勤日は何をしようかな」と常に考えていた。
図書館に通ってビジネスやデザインの本を読み漁った。
大学をサボってコーディングの勉強をしていた日もあった。

なんか、人間と一緒に暮らすうちに自分のことをネコだと忘れているネコみたいな感じで、自分を社員だと勘違いしていたのか?ってレベルで働こうとしていた。

当時のことを思い出すと、今もなんだか勇気が湧いてくる。
「あれだけ楽しく仕事していた時期が、人生の中で一度でもあった私はラッキーだ」と思って自分に自信が持てる気がする。


そんな今でも思い出す楽しいバイト時代、私に仕事とはなんぞやを教えてくれ、Webマーケの面白さを教えてくれた先輩と、今日ご飯に行った。

去年の年末に飲みに行って以来なので、一年振りくらい。

前回先輩と飲みに行って数ヶ月後に、一度私は体調を崩し、というか心がしっちゃかめっちゃかになって休職していて、最近やっと調子を取り戻したような感じだったので、正直「まだ昔ほど生き生きと仕事できていない」状態で先輩に会うのは少し心配だった。

それに先輩はバイト時代のイケイケドンドンな私をすごく買ってくれていた(のかな?)ので、今のだいぶ落ち着いてしまった私としゃべってもおもしろくないかも…とか、かなり不安だった。

(しかも私は今お酒を飲めないので、せっかく飲みに誘ってくれたのに大丈夫かなとかそんなことも考えていた)(詳細はシュトレンの回を読んでください)

でも、いろいろ近況を話すうちに私はまたバイトしていた頃のノリを思い出して、「最近前ほどハングリー精神がなくて恥ずかしいな」とかそう言う気持ちはだんだんなくなっていった。

何も不安に思うことなく「今の仕事楽しいです」とか「やりたいことがいっぱいある」とか、昔と同じようなことを言っていた。


他にも、当時同じチームだった人や、関わりのあるチームにいた人たちの近況の話もした。
多くの人はもう転職していってしまったけど、みんな転職した先で頑張っていたり、独立していたり、プライベートを楽しんだりしているみたい〜と言う話で盛り上がった。

誰かがどこかで頑張っている話をするたびに、先輩は「あ〜〜〜人生って感じだね〜〜」と言った。
私も、ほんと人生だなと思った。

小学校から高校くらいまでは、大体みんな同じように成長していくけれど、社会人になるとこうもみんな散り散りになって、それぞれ楽しい方を目指して色々な道に進むんだなぁと、当たり前のことを改めて感じた。

アニメの最終回でよくある、主要キャラが解散した後、エンディングの映像でそれぞれ解散した後にどうなったのかがちょっと見える演出みたいだ。



帰りの電車で、私は猛烈に「時間が進んでいる」感覚を覚えた。
時間がどんどん前に進んでいって、私を振り落とそうとしているような感じがした。

そして、時間の感じ方というのは相対速度のようなものかもしれないなと思った。

隣の車が50km/hで動いていて、自分が50km/hで動いている時は、隣の車がそこまで速く進んでいるように見えないように、自分がそこそこの速さで前に進んでいる時は時間の速さをそこまで感じない。
むしろ、この状態の時は毎日が繰り返しのように感じて、時間・人生が進んでいる感覚はあまりないかもしれない。

私の場合、中学生の時がそうだった。
ある程度うまく毎日をこなしていく術を身につけてやるべきことをやっているけど、それ以上の動きはないので、時間と自分が並走しているように感じられた。
相対速度0km/hの状態だ。

対して、バイト時代のやる気と好奇心がオーバーフローしていた時は、前に動きたい気持ちがあまりに強く、実際に動いていたので、時間と自分の相対速度はマイナスになっていた。
次から次にやりたいことが出てきて、そして実際に動くので、1日がいい意味で長い。
隣の車が50km/h、自分の車が70km/hで走っている時、隣の車が徐々に後ろへ下がっていくように見えるような感覚。

休職していた頃、つまり気持ちのエネルギーが切れて動けなくなった時は、時間においていかれていた。
多少本を読んだり頭をキープしようとはしていたけど、日がどんどん過ぎ去っていった。
隣の車が50km/h、自分の車が10km/hで走っていたら、もちろん隣の車にどんどん追い越される。


…あれ、何を考えていたんだっけ?
この辺のことを考えていたら電車が最寄り駅に着いた。

上手く言えないけれど、さっき「離れたところで頑張っている人たち・人生を楽しんでいる人たち」の話を聞いて、「時間が進んでいる」と感じたのも、相対速度と同じようなものだと思った。

時間に対して同じように動いている人、毎日前に進んでいる人を、私は今まだゆっくり走りながら見ているような感覚だ。
時間が50km/h、頑張っている人たちも50km/hで走っていて、私はまだ40km/hだから、相対速度10km/h。
したがって「時間と、頑張っている人たちが早く走り去っていくように感じた」のだと思う。


ところで、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第6部は、作中最強(最凶?)レベルの能力を持つ「メイド・イン・ヘブン」というスタンドが登場する。

ジョジョを読んだことのある方なら、その名前を聞いただけで、その登場シーンと能力が判明したシーンを初めて読んだ時の絶望感が蘇ってくるかもしれないが、「メイド・イン・ヘブン」には「時を加速させる」能力がある。そして、加速した時の中で、人々は時間の速さに追いつけなくなるのだ。

私は初めて「メイド・イン・ヘブン」が登場する話を読んだ時、「歳を取ったら時間が早く感じると言うけど、メイド・イン・ヘブンの仕業みたいで怖いな…」と思った。

でも、今日はなんとなく「時間が早く感じるのは、自分が進んでいないから」なような気がした。
時間において行かれないようにしたいな、と思った。


ジャネーの法則?
そんなもんは知りません。


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