見出し画像

ゆっくりと丁寧に書く

どのペン字本を見ても冒頭に「ゆっくりと丁寧に書きましょう」とあるけれど、「ゆっくり」なんて主観でしかないけど、実際私はどのくらいゆっくり書いているのか、という話。

「練習量が足りないから上手く書けません」
「もっと練習しないと上手くなりませんよね?」とよく聞かれるんですが…
「それって量を書く練習になってませんか?」という話も少し。

今回は(今回も?)超初心者向け🔰
ペン字始めて1年未満くらいの方向けかと思います。
中級者さんも初心に帰って再確認してみて下さると嬉しいです。


まずはおよそ2センチのマス目を用意して下さい。
で。マス目いっぱいに「まる」を書いて下さい。

では次に今書いたまると同じような丸い形の「の」を書いてみましょう〜

書けましたか?

どのくらいのスピードで書きました?
「まる」と「の」を書いた時の速さが「まる」の方がゆっくり「の」は速い方が多いのではないでしょうか?

では私はどうでしょう?
「まる」を書いてみた〜


「の」も書いてみた〜

「まる」は17秒
「の」は16秒
1秒の差がありました。

試して一緒に書いてみて下さった方、どのくらい速さの差があったでしょうか?


まるを書く時は…
枠からはみ出さないように
枠いっぱいに書けるように
上手く円形になるように
と気にして書いたハズです。

が!
幼少の頃より慣れ親しんだ「の」
サラッとなんとなく書いていませんか?
まるを書いた時より考えずにテキトーに書いてませんか?

では私が16秒間で考えていた事を解説。

「の」書く時に気にしているポイント

まずは書き出し位置
中心もしくは少し右あたりからそっとペン先を置いて書き始める
僅かにカーブしながら(1)左下のマス目中央辺りを目指す(2)
わずかに左斜め上へ中心より少し上辺り(4)へ直線的に上がる
書き出し位置へ向かって丸く(5)およそ左右対称をの幅、円形を意識して中心より少し下を目指す(6)
最後はゆっくりと下まで書く(7)
さらに筆圧も多少変化がつけられるように気にしたりもします。

16秒間でこれだけの判断をしながら1文字を書いてます。
5年間練習して書いているので多少は無意識で動いている部分もあるかと思います。

その昔、茶道家の方とお話しした事があるんですがその方が「身に付ける」というのは「無意識で出来ること」だと仰っていました。

ペン字も無意識で出来るレベルで書けるようになるのが理想で、そのためにはまず文字のポイントを頭に入れる事が大切なんだと思います。

「この線はここに書いて正しいのか、お手本と同じなのか」
を考えながら書くためには必然的にゆっくり書く事になります。
そもそも無意識で書くと残念な字になるので、いつかは無意識で書けるようになるためにもどう書けば良いのかを学びながら書いているわけです。
練習する時にしっかりと意識せず、なんとなく書いていてどうする!?という事です。


「キレイな字が書けるようになるために、たくさん書いた方が良いのでは?」
と初心者さんは思いがちですが
1文字書く時のポイントをしっかり確認しながら書くと時間がかかるのでそんなにたくさん量は書けません。
(持て余す程の時間がある方は別)

さらに書き終わった字が、その字のポイントを意識して書けているのかを再度見直し、次の文字に反映させて改善したい。
そう考えると…
1文字書いて終わるまでに
「1文字書く時間+反省する時間」
が必要になります。

なんとなくマス目を埋めて達成感を味わってませんか?
その練習は「文字をたくさん書く練習」になってませんか?

「キレイな字を書く練習」=「たくさん書く練習」ではありません。

効率良くキレイな字を書く練習をするためにも、少ない練習回数でいかにクオリティを上げられるかを考えてみて下さい。

(もちろん1時間くらい集中して続けて書ける体力というか手の筋力も欲しいので、量を書ける練習も必要ではありますが、それはある程度目習いが出来てきて字形が整ってからの話)


ちなみに最速で「の」を書くと…

5秒で書けますが…

5秒で書いた「の」

だいたいそれっぽくは書けます。
5年間練習した成果ですね。
が!線が汚い。
右側のカーブは歪みが目立ちます。
入筆も雑い。


初心者さんがこのスピードで書くと右側のカーブは確実に遠心力で暴走します。
車と同じですね。カーブは減速!暴走注意!

ペンのコントロールが出来ない段階で速く書くと思わぬ方向にペンが滑り、確実に残念な字になります。

ペンを自分が思う場所に思うカーブで運び、止めるためにもゆっくり書く必要があるし、どこを目指してどんな感じで書くのかを考えるためにも練習はゆっくり書く必要があります。

最近読んだペン字本に
「秒速1センチで書く」
と書いてありました。
私からすると速い!速すぎ!!
小慣れてきたら書けるけど、競書でさらに楷書だと秒速1センチで書くのはかなりしんどいかと思います。

考え方としては分かりやすいので、まずは「秒速1センチ」を意識してみるのも良いかと思います。
いきなりゆっくりも書けないもんなので。
少しずつ「ゆっくり丁寧」を目指して下さい。


ついでに…
ペン字通信講座などで人生で初めて行書を書いた!なんて方も多いかと思います。
私もそうでした。

「行書は速く書ける書体です」なんて解説などに書いてあったりします。

そうすると
「行書は速く書くもんなんだ!」と誤解する方が続出してます。

「速く書ける書体」ではありますが、それは慣れた人の話。
「速く書ける=速く書いていい」ではありません。
行書であってもゆっくり書きます。行書は楷書より見慣れていない分、暴走激しいですからね。
なんとなく勢いでシャシャっと書きがちですが、勢いで書いても美しく見えません。

ちなみに「碧」を行書だとこんな感じ

書き慣れた字ですが、そんなに速く書いている訳でもないです。


どのペン字本にも書いてある
「ゆっくりと丁寧に」
これが出来ると格段に上手くなります。

「ゆっくり」を意識して今より1ミリでもキレイな字が書けるように意識して、書き終わった後はいろいろと考えてみて下さい。
キレイな字を書く練習をするヒントになると嬉しいです☺️


これからペン字をやってみようかな?
なんて思っている方がもし今読んでいらしたら…
「ペン字は何かとめんどくさそう!」
と思うと思います。

でもその面倒さの中に自分の字が変わっていく面白さがあります。
昨日書けなかった線やカーブが翌日ふと上手くかけたりすると、めちゃくちゃ嬉しいです。
小さい楽しみと変化を見つけて、小さい「出来た」を積み重ねて行く事が「キレイな字」が書けるようになるコツだと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?