シェア
龍太郎。
2019年6月2日 23:10
或る時罠に一羽の八咫烏がかかった。その罠はかけた村人達がその後災厄によって死に絶え人知れぬものと為っていた。八咫烏は罠の格子の間から抜け出そうともがいたが、全ての努力が無駄であった。幾時経っても誰も通りかる事も無く、八咫烏は葉から落ちる露でのどを潤し、土を行く蟻を潰し飢えを凌いでいた。そこへ一人の僧が通りかかる。「聖なるお方、何卒私をこの檻から出してやってください。と、八咫烏は叫んだ。
2019年6月2日 23:08
机の脇に本を積み読みもせず埃を払いさえしなかったが、誰かが本に触れば「決まった並びと言うものがあるのだ。と、不機嫌に為る。約束があれば外に出る洋服が決まらぬと逡巡し、着ては脱ぎ、手に取ては投げ、時間は疾うに過ぎているのに自らは連絡を寄越さず来た電話には「直ぐに出る。の一言。晴れれば「陽が眼に辛い。と、踵を返し、雨が降れば「音が癇に障る。と、顔を顰め窓から遠くに座り込み。風が吹けば「そよぐ髪の気