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「共謀家族」は手に汗握る絶望の「家族犯罪」映画だった

※この記事は2021年11月9日にFANBOXに投稿した記事のnote移植記事となります。

観たかった「共謀家族」が池袋のシン・ブンゲイザで観れたので仕事の徹夜明けにも関わらず強行軍。

結論:最高だった。

主人公・維傑(ウェイジェ)は学もお金もなく、難しいお年頃の長女・平平(ピンピン)とはややぎこちない関係となっているが、まあまあ平和な生活を送っているごく普通の父親。人と少し違うところといえば、口先八丁が得意なことと、映画をたくさん観ていることくらい。

彼の平凡ながら穏やかな日々がある「悪意」によって突然崩れてしまう恐怖と、小さな幸せを守るために総てを背負う父親としての覚悟が描かれます。

詳しいあらすじ等はトレーラーで見れますが、私は元々「意図せず殺人を犯してしまい、それを隠蔽する過程で関わった者たちの人間関係が深化する」みたいな話がめちゃくちゃ好きで、この父親と長女の関係も事件を通して深く深く変化していくのがいい。これは家族の物語であり、父と娘の絆の物語でもあります。

いわゆる叙述トリック的なストーリー仕立てで、仕掛けそのものは物語の中で割とすぐに明らかになるのですが、「追う側」がトリックに気付く展開はそうとわかっていても非常にスリリング。

「共謀家族」は、追われる者と追う者の視点が交互に切り替わる構成が迫真で、しかも追う側であるラーウェン警察局長なる人物の恐ろしさ、息子を想う母親としての愛、執念といったものが凄まじい熱量で表現され、圧巻です。

(調べたら、警察局長役、ベルトルッチ監督の「ラストエンペラー」で婉容を演じたジョアン・チェンさんでした。そりゃ凄まじいはずだ。)

この映画は、

起きた出来事だけを俯瞰して見ると、登場した総ての人が不幸な結末を迎えているのですが、観終わった後には不思議とすがすがしい気持ちになっている、とても興味深い作品です。もとは「Drishyam」というインド映画からのリメイクだそうですが、殺人という罪の償い方について、彼等の信仰する宗教に絡めてストーリーで触れられているのが効果的だったのかもしれません。

そういえば、エンドロールに流れるテーマ曲「亡羊」も最高だったんだよなぁ…。

今年一番見てほしい映画の一本です。

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