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モーツァルト:演奏会用アリア「心配しないで、愛しい人よ」KV490、「どうしてあなたが忘れられましょう〜心配しないで、愛しい人よ」KV505、「この麗しい御手と瞳のために」KV612

演奏会用アリア

モーツァルトはオペラ以外に演奏会用のアリアを数多く書いています。それらはお気に入りの歌手のために書かれたり、他人のオペラに挿入するために、または自作のオペラのために作曲しました。演奏会用アリアは素晴らしい出来栄えのものが多いです。技術的に非常に困難な作品も含まれています。非常に重要なジャンルで、まさに傑作の宝庫です。それなのにジャンルとしての知名度がそれほど高くないの残念なことです。もう少し多めに演奏されてもいいと思います。でも、やっぱり有名なオペラアリアの方がみんな喜ぶんですよねえ…

♣️レチタティーヴォとアリア「どうしてあなたが忘れられましょう〜心配しないで、愛しい人よ」KV505

この演奏会用アリアは1786年作曲。モーツァルトの演奏会用アリアの中では飛び抜けた傑作です。フィガロ の年の作品ですから、とにかく冴え渡っています。作品はピアノのオブリガートが付いているので、オペラティックでありながらピアノ協奏曲的です。言うまでもなくモーツァルトにとってオペラとピアノ協奏曲は特別なジャンルです。そのオペラとピアノ協奏曲を合体させたような非常にユニークな作品です。モーツァルトは「フィガロの結婚」の初演でスザンナを歌ったアン・セリーのためにこのアリアを作曲しました(詞はダ・ポンテ作かもしれないと言われています)。ピアノは自分で弾くために書いたようです。ピアノパートは、歌と緊密に絡み合っています。

👇の動画はアダム・フィッシャーが弾き振りしています(ベルリン・フィル)。暗譜でやってますね。すげえ...
本職の「ピアニスト」みたいじゃなくても、「指揮者」が弾くピアノはぼくは味があって大好きです。’(バレンボイムやエッシェンバッハ、アシュケナージのような元々名ピアニストな人たちは、ここでは除外します。ぼくが思い浮かべてるのはブルーノ・ワルター、サヴァリッシュ、バーンスタイン、レヴァイン、パッパーノみたいな人たちのことです。)だいたい指揮者は職業柄ピアノうまい人が多い

👇はエッシェンバッハの弾き振り(北ドイツ放送響)。マーガレット・プライスの独唱、素敵だ〜。マーガレット・プライス大好き。エッシェンバッハはそもそも名ピアニストですから、ピアノが素晴らしいのは当然。

👇はグルダの弾き振り(ミュンヘン・フィル)。そしてなんとアグネス・バルツァの独唱。グルダの指揮は楽しそうで良きです。ぼくはグルダの弾き振りがけっこう好きです。ハッピーな気分になれる。

初演はこれらの動画のような感じでモーツァルトが弾き振りしたのかもしれませんね。そうやって思い浮かべながら聴くと楽しい。

楽譜👇を見ながら聴いていると、どうしても「ロンド」と書いてあるのに目がいってしまう。(1分50秒くらいのところ)。ロンドですよ、ロンド!そう、ロンドなんだよなあ。アリアなんだけど、ホントに協奏曲寄りなんですね。

👇の額の動画はハーガーの弾き振り(ザルツブルク・モーツァルテウム管)とエディット・マティス独唱。


♣️演奏会用アリア「この麗しい御手と瞳のために」KV612

"Per questa bella mano”KV612は、KV505と同様にオブリガート付きの演奏会用アリアですが、オブリガートを務めるのが 何とコントラバス!とゆーのが異例で、独特です。バスの独唱にコントラバス独奏のオブリガートを持ってくるモーツァルトの感覚がおもしろすぎです。もしかすると「バス同士でおもしろいじゃんわはは」みたいな感じで冗談ぽく書き始めたのかもしれません。コントラバスのソロには重音や、急速な走句、幅広すぎる音の跳躍などの超絶技巧が容赦なく要求され、バスの独唱もコントラバスと張り合うかのように技術的にめっちゃハードルの高いものになっています。主役二人が名人芸をサディスティックに応酬し合う様は、スリリング!の一言に尽きます。

この作品は1791年3月、「魔笛」に取りかかる直前の作曲です。「魔笛」の初演でザラストロを歌ったフランツ・ゲルルと、シカネーダーの劇場オケの首席コントラバスのフリードリヒ・ピシュルベルガーのために書かれました。二人とも上手かったんでしょうね!これが弾けて歌えるのはけっこうとんでもないことです。


♣️演奏会用アリア「心配しないで、愛しい人よ "Non temer amato bene"」KV490

このアリアにはヴァイオリン独奏のオブリガートが付されています。1786年、「フィガロ 」の年の作品です。イドメネオの再演のために書かれた代替曲です。歌詞の多くの部分はKV505に再び用いられています。






















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