七種合の駒数記録を更新した話(1)

note初投稿です。本テーマは全2回とする予定で、今回は1回目です。長いので、以下常体で書きますね。コメントを頂けると励みになります。 #詰将棋 #将棋

目次
(1)改良前の作品の話 ★今回★
(2)改良後の作品の話 次回

何の話?
詰将棋の「七種合」というジャンルで駒数最少記録を10枚から9枚に更新した話。具体的には、もともとタイ記録(10枚)の作品を作ったことがあり、それをいかに改良して駒数を1枚減らしたかという話。

何が面白いの?
詰将棋ができるまでの過程が詳細に語られることは少ない。一度発表した詰将棋の改作であればなおさらだ。しかし、ひとつの詰将棋が長い時間を経て進化していく様子を描写することで、面白いと思う人がいる…かもしれない。★基本的に詰将棋の創作経験がある方向け★

というわけで、
改良前の作品の話をする

元の図

図1

元の図_詰め上がり

図2


作意手順:
35龍、34歩合、45桂、23玉、25龍、24香合、22馬、同玉、24龍、23銀合、33桂成、同金、31龍、同玉、33龍、32角合、42金、21玉、32金、同銀、24香、23桂合、同香生、同銀、同龍、22飛合、43角、31玉、33龍、32桂合、23桂、21玉、32角成、同飛、11桂成、同玉、12銀、同玉、32龍、22金合、14飛、13桂合、24桂、11玉、13飛成、同金、23桂、同金、12桂成まで49手詰

詰将棋パラダイス誌 2012年3月号に掲載された作品。手順を追うと、歩香銀角桂飛桂金桂と、7種9回の合駒が登場する。右上の狭いエリアだけで合駒が出るのは珍しいかもしれない。下記で手順を並べることができる。
http://yakkun1987.web.fc2.com/tume/nyusen/045.htm

この作品は逆算で創っている。

素材

図3

図3に至る起点は、詰将棋パラダイス誌 2007年3月号に掲載された作品である。http://yakkun1987.web.fc2.com/tume/nyusen/029.htm

創作の起点

図4

作意手順:
34香、33香合、同香成、同玉、44龍、22玉、31馬、同玉、33龍、32角合、42金、21玉、32金、同銀、23香、同銀、同龍、22飛合、54角、31玉、32銀、42玉、43龍、51玉、41銀成、61玉、63龍、62金合、同龍、同玉、63金、71玉、72金まで33手詰

当時は「合駒が4回もでた」ということで自分自身満足していたのだろう。しかし、いかにも更に良くできそうな作品だ。その後、この作品の配置を少し変えることで図3が得られることを偶然発見したのである。
(図3の作意手順は図1の途中からの手順と同じなので省略する)

素材

再掲図3

図3の作意手順で登場する合駒は角桂飛桂金桂の4種6回。七種合に足りないのは・・・銀香歩の3種だ。盤面を見てみると、幸運なことに、23には銀がいるし34には歩がいる。当然私は思った。図3からこの2枚と香車を余計な駒を増やさずに合駒として発生させれば傑作の誕生では?しかしこれはまさに「言うは易く行うは難し」であった。以下その過程を述べる。

原図_角合

図5

目標(七種合)に向けて一歩を踏み出した私は、やがて銀合が出そうな上図の着想を得た(3分クッキングのような唐突感があるかもしれないが、限定合を実現するコツは「慣れ」である。近道はない

24竜に23歩合は33桂成、同金、31竜以下、32に利きがないので簡単に詰む。香・桂合も同様だ。また、24竜に23金合は、21竜、同玉、23竜、22合、33桂生以下詰む。

この23金合を割り切るというのが意外に曲者だった。様々な配置を考えたが、「1段目の竜と45桂の配置」以外に解決策を見つけられなかった。そのため、以降の逆算では1段目の竜と45桂の配置が絶対となった制約①
さらに根本的な問題がある。そもそも図5は23角合で詰まないのだ。

角合が詰まない

図6

図6以下は作意同様に33桂成、同金、31竜、同玉、33龍と迫る他ないが、32角打合で詰まない。

得られる結論と対策はとても明快でとてもつらい。

24竜とした局面で受方が角2枚を持っていると詰まない
よって24竜とした局面でどこかに角が居なければならない(制約②)

制約が増えて2つになった。
① 1段目の竜と45桂の配置が絶対
② 24竜とした局面でどこかに角が居なければならない

制約が増えると当然逆算の選択肢は狭まり、七種合実現の可能性は低くなる。果たしてこの挑戦の先にゴールはあるのか?

元の図

再掲1図

***
詳細は割愛するが、幸いなことにゴールはあった。幸運だったのは初手35竜に対する34歩合が限定できたこと。香合は作意同様に数十手進め、後半で34の香車を奪いに行く早詰が成立しているのである。

一方、苦労したのは香合。歩合できる状況で香合を作意とする逆算がどうしてもできず、結局、27歩を置くことで、25竜24香合という逆算を入れることにした。また、76馬は先述の制約②を満たすため、および余詰防止のための配置である。強調したところで少しも格好よく無いが、76馬配置は制約②のためだけの配置ではない

***
複数の制約をかいくぐり、盤面10枚で完成。形は広がってしまったが、七種合の使用駒数としては最少タイだ。当時の私は深く考えずに詰将棋パラダイス誌に投稿してしまった。未来ある若者は同じ過ちを繰り返さないでほしい。

自身初となる7種合を発表して満足してしまっていた私。
しかし時を経て、やがて疑問を抱くようになるのであった。

この作品、本当に完成形??

次回に続く

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