七種合の駒数記録を更新した話(2)

第2回である。

第1回
https://note.com/__yakkun/n/n3417ffe55791

目次
(1)改良前の作品の話 前回
(2)改良後の作品の話 ★今回★

今回は改良後の作品の話をする

図7

図8

作意手順:
25金、33玉、35龍、34歩合、24金、同馬、11角、43玉 、44角成、32玉、22馬、同玉、24龍、23銀合、44角、33香合、 同角成、同金、31飛成、同玉、33龍、32角合、42金、21玉、 32金、同銀、24香、23桂合、同香生、同銀、同龍、22飛合、 43角、31玉、33龍、32桂合、23桂、21玉、32角成、同飛、 11桂成、同玉、12銀、同玉、32龍、22金合、14飛、13桂合、 24桂、11玉、13飛成、同金、23桂、同金、12桂成まで55手詰

図9

改良の起点となったのが図9である。というよりも、図9の発見こそが全てであったと表現すべきかもしれない。前回の図3と見比べると、54金が54歩と61桂に代わっているだけである。しかしその「だけ」がとてつもない違いだったのだ。

図10

そもそも図3の54金は何をしているのか?を説明する必要があるだろう。図10は22飛合とした局面である。54金がないと、54角33桂~53角という筋がある。これらの筋を同時に消すために、54金を配置しているわけなのだが、当時はこの配置が好都合かつ絶対だと思い込んでいた。

その思い込みが間違いだと気付いたのが図9である。61桂と54歩の存在によって53角や54角が打てないので、この2枚が54金の代用となっていることは理解頂けるだろう。しかし駒数が従来より1枚増えているではないか?これでは駒数を減らすどころではないのでは?

図11

ところがそうではなかった。図3と図8の差異として44に受方の利きがないことが挙げられる。この差異によって図11に辿り着くことができた。

図11の最初の4手は24竜23銀合44角33香合だ。ポイントは2点。
(1)44に利きがないので44角が打て33香合が出せた
(2)図4では詰まなかった24竜に対する23角合が、11角~23竜以下で処理できた

この図に辿り着いたときには思わず快哉を叫んだ。何と言っても余計な駒を置かずに香合が出せたことが大きい。34に歩があるため、33の地点で合駒を要求すれば、歩合の選択肢はないのだ。改良前の作品で27歩を配置して香合を実現させたのとは雲泥の差ではないか。

図11は使用駒8枚で6種8回の合駒が発生する。ここから駒数を2枚増やして34歩合を出せば8+2-1=9。記録更新である(書くまでもないことかもしれないが、合駒を出すと駒数が減るのだ

***

再掲7図

完成図である。25金33玉35竜34歩合24金…以下数手進めると図11の局面となる。(3分クッキングのような唐突感があるかもしれないが、限定合を実現するコツは「慣れ」である。近道はない)

図11から34歩合を出すために重要なのは、
(1)34に高い合駒をしたときに詰むこと
(2)34に香合や桂合をしたときに作意より手数が短い詰みがあること
この2点である。

1については25金の配置で解決した。高い合駒をしたら25の金で取りますよという単純明快な解決方法だ。

2については幸運だったとしかいいようがない。35竜に対して34香合または34桂合は31飛成以下手数は長いものの早詰がある。もちろん、作意の34歩合に対して31飛成は詰まない。最後の最後で運も味方した。

なお、私だけの力ではこのような逆算は不可能で、本作は柿木将棋や脊尾詰といった検討ソフトをフル活用した産物であることを付記しておく。

★3点補足する。細かい内容なので、よほど合駒が好きな方を除き、次の星マークまで読み飛ばして頂いて構わない。

図12

(1)34香合をどのように割り切るかという観点で補足。本作の場合、作意手順同様に進めて、後半で早詰に持っていくというアプローチは取れない。何故か?図12を見て頂きたい。34香合に対して作意同様に進めようとすると、24竜に23角合で詰まないのである。理由は11角32玉23竜同玉21竜14玉と進んだときに36角が打てないからである。よって、本作の場合は合駒をした瞬間の局面で差を出す必要があったのだが、31飛成という筋で運よく処理できた。
教訓:必要がない場面に限って絶妙の香合が現れる

(2)54の駒は香や桂でもよい可能性がある(検証不要になったので結論は確認していない)。54歩の配置で34歩合が限定できない場合は、54香や54桂の配置を試してみようと考えていた。44角に対する33桂合を割り切るために54は塞いでおく必要があるので、歩・香・桂の配置が全滅したら手段が尽きると心配していたが、幸運にも最初に試した54歩の配置が完全作であった。

(3)初手は必要か?という疑問を持たれるかもしれない。初手を入れた理由は、「七種合・盤面駒数最少」においてもタイ記録(7枚)に並ぶからである。記事のタイトルが不適切だったといまさら後悔しているが、今回記録を更新したのは「七種合・使用駒数最少」である。使用駒数とは盤面の枚数と持駒の枚数の和である。

【参考】七種合・盤面駒数最少
小沢正広 「賎ヶ岳」 近代将棋 1988年9月
http://www.ne.jp/asahi/tetsu/toybox/challenge/c3002.htm
無仕掛け図式7種合という凄まじい作品である。

***
かくして使用駒数9枚の七種合は完成した。この記録が今後破られるかどうか、とても楽しみだ。もし破られたら、「七種合の駒数記録を更新された話」をしようと思う。

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