ふーことユーレイシリーズ【完結編】について思うこと②


ユーレイ・ラブソングは永遠に

「あんまりな終わり方に物議を醸しだした」
そんな感想をよく見かけました。
「ふーこは二度と誰とも恋愛出来ないんじゃない?」「結婚も出来ないよ」
「これが本当にhappyなの?」
この意見に「うーん」となりました。
少なくとも、ふーこと和夫は納得している、幸せであると思えるからです。

さて、その終わり方を迎えるにあたってあらすじを書きます。
まあまあ端折るので気になる人は手に取って読んでくださいね。

ふーこが和夫の記憶をなくしている状況。
和夫はそんなふーこに心を痛め、周囲にいます。
和夫がふーこの通学路にあるフェンスに触れれば、ふーこはなんとなくそのフェンスに触れる。和夫が深夜に公園の石に座ってふーこを思えば、ふーこも通学中にその石に座る(しかも石の上にある荷物をどかさせてまで)
和夫がふーこの部屋の窓ガラスにキスを擦れば、その晩、ふーこも同じ場所にキスをする……。切ない……。
しかも最終巻だけ、ふーこから見た物語と和夫から見た物語+心情で表現されているんです。和夫がいかにふーこを好きか。ふーこがいかに思い出せない人のことを考えては心を痛めているか。前巻でつけられた首についた傷跡に触れて、あたたかな気持ちになっているか……。
それが波状攻撃というか、サラウンドで読者を襲う訳です。
和夫の「好き!」「好き!」という気持ちと、ふーこの「どうしても思い出せない!この気持ちは何!?」という思いが痛いほどに伝わってくる。
丁度1巻でふーこを好いていた葉月くんがまた戻ってきたところで話がさらに変わっていきます。「もう指輪していないんだね」「比村和夫、俺のライバルの名前」とふーこに話すことで、ふーこは「この心にある思い出せない誰かは和夫だ」ということを確信。しかしそれは、和夫の情報でしかなく、和夫自身を思い出したわけではないことに和夫は嬉しいような悲しいような気持ちになります。

さて、さらにお話は急展開。なんとユーレイである和夫が見える人がいました。ふーこのマンションの管理人さんです。ガンを患ったせいか、ユーレイが見えるようになったのだとか。以前からふーこと和夫が空を飛んでデートに行くのを「憑りつかれたのでは」と心配していたそうですが、普通にお互いを想い合っている様子だと思って一安心したと和夫に話したんですね。
自分は末期のガンだから、もう命は短い。だからそれを、和夫君に……と命のエネルギーを和夫に渡し、倒れてしまいます。倒れた場所は薔薇園。ちょうど葉月君とふーこが出かけていた場所。ふーこは誰かが倒れたと聞いてまっしぐらに走って向かっていくと、そこには倒れ伏す和夫の姿が。
そこで記憶を一気に取り戻します。しかし実際に倒れているのは管理人さん。すぐに救急車が来て、ふーこも和夫も乗り込み、病院へ――。

ふーこが記憶を取り戻したことを霊界に言いに行くと告げる和夫を見送り、ふーこは自宅へ。お母さんは不在。弟はいるはずだけど、家の中が煙だらけ。弟はふーこが悪霊にとらわれていると考えていて、自室で蝋燭を立ててお祓いの儀式をしてたら、蝋燭が倒れ。火事にはならなかったけど煙で充満。ふーこは一生懸命弟を部屋から引きずり出して――心臓が止まります。
病院ではふーこの魂がぎりぎり体にとどまっている状態。これから魂が抜けて、死後の世界へ行く状況。
死んだら和夫と会えない。それは霊界で最初に定められた掟。
でも、これも運命だからと諦めるふーこに、和夫は生きていて欲しいと話します。ふーこは和夫が何をするのか分かりました。もう会えなくなるのは嫌だ、とも話しました。でもどうしてもふーこが助かって欲しい、だから……と口づけをして和夫は自分の魂をふーこの身体に取り込ませ、一命をとりとめさせます。

ふーこは助かりました。和夫の姿は見えません。寂しさの余り、自分の身体を抱きしめるふーこ。そして心の中から声が聞こえます。
「僕たちはずっと一緒なんだ!永遠に!」という和夫の言葉が。

これで話は終わります。
「二度と恋愛出来ない」という感想になるのも無理はありません。
読み終えた後、言葉にならない感情で一杯でした。ただひたすらにふーこと和夫の感情だけが心に満ちていました。
もっと何か情報が欲しい。そう思って、私は図書館へ行きました。
kindleで買ったんですが、kindleにはあとがきがないんです(1巻にはあったけどね)あとがきからなにか、なにか――と思い、縋る気持ちで児童書コーナーをチェック。なんと最終巻だけ置いてありました。
逸る気持ちを抑えてあとがきを読みました。
原作の名木田先生は「この終わりしかない」と書いていたこと。絵を担当した、かやまゆみさんのあとがきには「表紙のふーこと和夫は原作の名木田先生指定だった」と書いてあったこと。そして、話の中に葉月くんが戻ってきたことを考え、一つの結論が出ました。

「ふーこと和夫、結婚したんだ」
そうとしか考えられない。
葉月くんの登場は1巻の「ユーレイと結婚したってナイショだよ」からのオマージュに見えるし、最終巻の表紙は思いっきり結婚式。
「他の人と恋愛」なんてしないんですよ。だってずっと和夫と恋愛出来るから。何なら一生一緒だから。そうなると結婚となるわけですよ。

見えなくても、抱きしめてもらえなくても、心に和夫がいる。
離れずにずっといる。話しかければ応えてくれる。
ふーこのマンションの管理人さんは一人の女性を思ってずっと一人でいましたが、ある意味ふーこも同じルートをたどることになったってことかな(厳密には管理人さんの思う女性は管理人さんの子供を産んでいて一人で育ててなんなら孫までいるんですが)(それはさておき)

ふーこは和夫と結婚式を挙げることも、子供を産むことも出来ない。
それが本当にハッピーなの……?
ということで感想がいろいろ別れているのだろうなと思います。まぁ確かにハッピーではなさそうな気がしないでもないんだけど……でも鬼になっても好き!地獄に一緒にいる!とまで言い切るふーこの情熱は、私たちの懸念なんか軽く吹き飛ばせるはず。

会えなくて寂しい、キスがしたい。抱きしめ合いたい。顔が見たい。
でも、ここにいる。誰よりも近くに和夫がずーっといる。というのは、幸せと言えば幸せなのかもしれないなぁ……。
だって何するにも和夫がいるんだものね。
和夫はよく「ユーレイだから○○出来ない」と悩んだりしていましたが(実際に会うとかデートするとか)ある意味一体化してもそこは変わらないわけだし……なんならふーこが出かければそこはデート先になるわけで。意外と楽しい人生になるんじゃないかな、というのは楽観的でしょうか。笑

でもね、ふーこは(和夫も)それでいい。ううん。それがいいんです。
これから6年生になって責任ある立場になるふーこを和夫は励ますでしょう。中学に入学するふーこの制服を可愛いと褒めちぎる和夫もいるでしょう。一緒に中学時代を過ごして、高校も大学も就職も。全部全部和夫と一緒。和夫はユーレイになってるけど、ふーこと一緒に成長出来たりするんじゃないかなぁ。それはそれで、和夫は人生を生き直せるんじゃないでしょうか。誰よりも大事な女の子と一緒に。
そう考えたら、ハッピーエンドもあながち間違いじゃない。
むしろ「ユーレイと本当に恋をしてしまったのなら」正しいエンディングだったのかもしれないと、私は思いました。

さて、このドラマチックで一途なふーことユーレイシリーズの原作者。
知ってる方もいらっしゃると思いますが、キャンディキャンディの原作者である水木杏子さんの別名義になります。
それを知ってから読むと随所に出てくるシーンが、まさに「そう」なんです。この方らしさが如実に出ている。
強烈なまで惹かれあい、一緒にいるときはちょっとほのぼのとしていて、二人を引き裂くようなシーンとなると絶望や悲しみ、離れたくないという気持ちが強く強く感じ取られます。
名木田先生が水木先生と知った時、思わずあのシーンがよみがえりました。

キャンディキャンディの名シーンの一つ、テリィのバックハグ!

テリィとキャンディの別れは当時の少女たちに大変な衝撃だったらしく
クレームのファンレターが多かったとかなんとか。
この二人位の熱い思いがね、ふーこと和夫にもあったんです。
全巻通して読むと、お互いの思いの強さが分かります。
とんでもなく強すぎる、まっすぐで一途な愛。
そして、和夫もふーこも小学生なんだなぁーって思うようなことも多々!
ふーこはふーこで和夫が守護霊だったころは「危ない目に遭わないと会えない」って知ってるもんだからわざと危ない目に遭ったり(そして霊界に目を付けられる)和夫は和夫でそれに応えちゃうし(まあそれはそう。守護霊だし守らないとね)そして和夫も掟を破ること多々!多々!
最終的に古賀流介から「掟破りの比村」とまで呼ばれるくらい!笑 
流石射手座のO型です。行動力がエグすぎる(ちなみにふーこはてんびん座のA型)
そりゃ霊界も黙ってはいられないって訳ですよ。無理もないですよ。
掟破るばっかのユーレイと、その火種となる人間がいたら離すのも無理はないわけです。ふーこが記憶を取り戻して和夫が霊界に行ったら許しを貰えたのに……流石の霊界もお手上げだったわけですね。
「この二人は離しておくと逆に危ない」そんなところにまで判断が行ったんじゃないでしょうか(おそらくだけど)

二人はもう大丈夫。だって永遠に一緒にいるのだから。
私はそう思いました。


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