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無職パンク

クリスマスプレゼントでもなんでもなく、突然、服を貰った。

半年くらい前に連絡をした時に私が「あそこの新作がかわいかったけど装うことで自分の機嫌を取っていいのかという気持ちになって買えなかった」と言ったのを聞いてその後買いに行ってずっと機会を伺っていたけれど連絡してもいいのかもわからず渡せなかったのだと言った。

真っ赤な紙袋。赤いロゴがパターン印刷された薄紙。ノーカラーが透けて見える。グレーの生地を何ヵ所も切り返したパフスリーブに赤い刺繍のロゴが映えるシャツ。気後れして諦めた夏の新作だった。

出会った時が買い時。
私が買い物をする時によく言うせりふらしい。それができないのはよっぽどやと思ったのだと言う。

私はまさかまた出会うと思っていなかった袖にたっぷり入ったプリーツを伸ばしたり縮めたりしながら、諦めて仕事のついでに来ただけやからと言い聞かせて伊勢丹の下りエスカレーターに乗った時の気持ちを思い出した。

「似合うと思う。ショートカットにしたのも知らんかったけど。何年ぶり?心配したよ。一年半前に仕事やめたよ俺。今無職よ。」

「は?無職が買うものじゃないでしょう」

「無職やけど買ったよ。」

「パンクでいいと思う。ブランドコンセプト的にも合うし。」

「しばらく就職はせん。」

「うん、金髪にしたらいいと思う。似合うよ。モヒカンとか。」

季節外れになってしまったけど、中にヒートテックとか薄手のニットとか着て、明日から着るよ。

街中を出歩くのはまだできひんし、相変わらず通販ばっかやし、入ったら終わりやと思いながらついにアマプラも入ったけど、近所のタリーズくらいなら行ける気がするよ。気分が乗ったらそのまま電車に乗ってどこかへ行けるかもしれへんし。

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