161228 柿食う客『虚仮威』@本多劇場

柿喰う客『虚仮威』、観劇してきました。

下北沢・本多劇場は『ベター・ハーフ』ぶりの二度目。チケットは一般販売のコンビニで買ったのですが、前から5列以下でした。

私が観劇した日は東京公演初日で、10代の若い男女から、子供連れのお母さんや老夫婦と、幅広い年齢層がずらりと客席を埋めていました。

劇団結成10周年の新作での上演とのことですが、お恥ずかしながら柿喰う客の存在を知ったのが昨日今日なため、新人さんがたくさん入ったようですが、そもそも誰が新人さんでベテランさんなのかわからないし、俳優さんと役も結びつかないという状態での観劇でした。

そんな私の今回のお目当ては、脚本・演出、そして劇団の代表である中屋敷法仁さんです。

劇場は緞帳がなく、舞台の上には櫓がひとつ置かれているだけ。てっぺんまで登ると地上にいる人間の頭を優に見下ろせることから、公園でよく登ったジャングルジムを思い出しました。セット転換はありません。

本編は、幕間なしの約90分。演者は全員舞台の上に出ずっぱり、だったように思います。前列から観ていたので奥に入った人たちがどのように動いていたかまでは把握してません。

すごく独特な舞台でした。

まず衣装が全員赤×黒基調で、ある人は体のラインがむき出しなサロペット、ある人はワンショルダーのワンピース、スーツ、ボーダーのタイツにかぼちゃパンツなど、街中を歩けるような服装の人は誰もおらず、かつメイクは肌を真っ白に塗ってゾンビのように目周りを黒く囲い、頬やこめかみに入ったチークはまるでそこから血が染みているようでした。クリスマス時期のお話なのに、服装だけ見るとハロウィンの方が近いです。奇抜な服装と打って変わって家族が出てくるお話なので、役にはお父さん、お母さん、子供と普通の人間が殆どを占めるのに、お母さんだからエプロン姿、とわかりやすいアイコンで衣装を宛がっていないのが興味深かったです。

ストーリーもビジュアルも該当記事があったので、詳しくはそちらを参照に…。

物語には現代と大正時代、ふたつの時間軸が存在します。話運びが独特で、台詞や動作は止まることなく進んでいくのに、ふっと一年が過ぎたり、役者の演じる役が変わったり、現代に戻ったりと、暗転やセット転換がないのに次々と場面が移ろいでいきますが、不思議とおいてけぼりを食らうことはありませんでした。

公演後のアフタートークショーで、話運びについてお客さんから質問を受けた中屋敷さんは「そもそも昔から能や歌舞伎はこのような形で行っていた。現代のテレビドラマのような、実生活の会話をリアルタイムで演じる方が自分には違和感(意訳)」と答えていたのが興味深かったです。それが記事にもある「演劇でしかできないこと」のひとつなのだろうなと思いました。

漫画『ガラスの仮面』でマヤの演技を見た人たちが、体育館の跳び箱がゴンドラに、体育倉庫がヴェネチアに見える、といったシーンがありましたが、今回も正にそんな感じで、舞台上の櫓は神様の住む山になったり、煙突のあるお屋敷になったりと、いちいち言葉での説明がなくとも、役者さんの演技でその違いが伝わってきました。これはきっと、生で感じないと観る側にうまく伝わらないのだろうな、と。

アフタートークショーの質問でもう一つ。今回の舞台のメインである「サンタクロース」について。これもざっくりうろ覚えの意訳なのですが、「サンタクロースは大正時代頃日本に入ってきた文化で、当時の日本には家族で団欒するようなイベントがなかった。お父さんが絶対で、妻は三歩下がって後ろからついてきて、子供は親には逆らえなくて。そこで入ってきたクリスマス文化は家族の形を作る一役を担うようになった」そうで、さらに劇中には山の神様や座敷童が出てくることを併せて「今の子供はサンタクロースを信じても、家に座敷がないから座敷童のことは信じないし、都会に住んでいると自然を司る神様とも縁が遠くなるからそちらも信じていない。当時はサンタクロースの方が異文化だった」とも話していました。劇中当たり前のように出てきた山の神様や座敷童の存在を観て、この作品をある種“ファンタジー”と位置付けた自分の価値観についてハッとさせられました。サンタクロースは日常で、座敷童や神様を非日常、昔はその立ち位置が逆だった。時代性と物語がしっかり絡み合っていたことに気付かされて感心しました。深い!

中屋敷さんと柿喰う客の長年の関係性があってこその演出方法だと思うのですが、台本が配られたときには誰がその台詞を言うか決まってなくて、実際に動きながら誰がどの台詞を話すかを決めていったり、本来演じる役と違う役を稽古で演じたり、などと、普段あまり耳にしない稽古方法を取っているのも新鮮でした。脚本家や演出家だけでなく、俳優も演劇を作る、といった姿勢がこの『虚仮威』を作ったのだと思うと、演劇って思っていたより自由で、私が知らない顔がもっともっとたくさんあるんだろうな、と考えさせられました。

私が舞台を見始めたのはここ3年ほどのことで、いろんな作品を観た気になってしまいそうでしたが、全然そんなことなかった。はえぎわといい柿喰う客といい、まだまだわたしの知らない演劇の世界がたくさんあるんだなあ、と今一度実感。中屋敷さん演出のコメディ舞台『サクラパパオー』がますます楽しみです!

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