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システム異常

あなたの人生を知らない
あなたの生活を知らない
きっともう二度と会うことのない
あなたの名前を忘れてしまいました
それでいいと思いました
きっと、
最初からそうだったような気がしている
離れた世界の離れたいきものだったんです
いつもふらふらと揺れる振り子人形の
顔は思い出せたことがありません
汚い布で縛って辛うじて生きているあなたの
その顔は思い出せたことがありません
夜行バスにはカーテンが掛かっていて
外の様子は何も見えない
自分の様子さえもなにもわからない
元気かと聞かれるとまあまあと言いたくなるような
そんな感じの人生を
私はなにも知りません
それでいいと思いました
指先に光る蛍光グリーンが
いつまでも輝けずに悲しく弦を弾きました
暗く閉ざされた真っ暗な部屋で
ずっとひとり、真っ黒な感情を
飽きもせず空きもせず
ただ流れるままに揺らしているのです
媚びた真っ白の紙に書いた感情は
嘘ではなかったけれどもう忘れてしまいました
出会いがあっても別れがなければ
続けられると思わないほうがいい
たまに生存確認をして
たまに同じように金切り声で
小さないのちをうたいました
きっともう二度と会うことはないでしょう
おおきくなったらきらびやかな場所まで
連れて行ってそれで、
それで小さないのちをうたってください
あなたが元気でいるのはきっと全部嘘
全部全部全部全部全部全部全部全部
全部全部全部全部全部全部全部全部
緊急停止ボタンでとまる人生ならば、
どれほどよかったのかと問われたそんな
そんな小さな海はとうに干からびて
くるはずの押し寄せる波が綺麗に消えていきました
あつめてまとめたそれらの極彩色を
押し潰して押し潰してそれで消えていきました
小さな海はまじわらない
あなたの人生とまじわらない
きっと綺麗な色をしているのでしょう
それらはいつか空へいけるのでしょうか
電車の来る音が引き裂くようなものもなく
縮れたラーメンみたいな
そんな人生が
そんないのちが
もしもあったなら

#詩