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「日記を書いて下さい」

「みなさん、日記を書いてください。スマホでも手帳でもなんでも良いから日々のことを書いてください。」


ゆりこ先生はいつも授業を始める前に雑談をする。自分の息子の話や、ニュース、休日あった事、自身の体調の話。

ぼーっと時間が溶けている感覚しか無かった。
90分もあればそりゃ雑談も無いとやってられない

何気ない日々の何気ない火曜日の2限目。

「皆さん日記は書いていますか?私は毎日あった事や嫌だった事、嬉しかった事を書いています。記録する為というより、自分の気持ちを整理するためです。」

あ、次の授業のレポートの評価大丈夫かな。ご飯も急いで食べなあかんなーー。この授業正直飛んでも良かったかも。

「悲しいニュースを朝見て来ました。人って急に何かが切れたみたいに居なくなるんです。考える間もなく。ずっと心に反吐を溜め込んで入りきらなくなってしまうと溢れ出てそのまま居なくなるんです。」

「だから皆さん。日記を書いてください。悪口でもなんでも良いです。吐き出して下さい。私は心理学者でも何でもないので、これで心が軽くなるとか科学的な根拠は分からないですが日々の日記を書いて下さい。お願いします。」

「私は皆さんが居て欲しいです。」

少し感情的な先生を初めて見た。同じ言葉を何度も繰り返しているし言葉もあまりまとまってはいない。

たが最後の言葉が心に刺さった。なんなら泣いていた気までする。


私たちと先生は言ってしまえば赤の他人で血も繋がっていなければ、一年生の間だけの関わりだ。

だけどこんなに必死に私たちに生きて欲しいというメッセージを送ってくれている事に私は感激を受けた。



ただの火曜日の2限が忘れられない時間となった

ゆりこ先生も言葉にしてくれた。だから私も。


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