続ける!プロの小説家を目指して毎日掌編小説練習!「幻のせい」
サイロはナイフから滴り落下した血の音を数えていた。そうすればひととき落ち着くことができるからだ。
しばらく止まっていた呼吸が再開するようだった。その光景を理解する途端、激しい過呼吸が襲った。同時に嘔吐物も血溜まりと交わって黒に近い色にまで濁っていった。
言葉にならない発狂。彼は自分の友人を殺したのだ。なぜか、それは数十分前まで遡る。
「サイロおッせーな」
「どっかで道草食ってんじゃねーのかしら」
派手にパンチの効いた服装をきた男と、メイクとピアスだらけの女がチップスパーティー開けで彼を待っていた。
「俺たちの約束覚えってっかなー」
「イヤーだって約束したの5年前で私たち11歳よ?」
「しかも忘れっぽいサイロだしな」
先に集合していた二人は和気藹々と5年ぶりに話をしていた。
と、そのときだった。インターホンがなった。
「サイロだな!私が出るわ!」
女はチップスを袋から持っていって玄関に駆けた。
「サイロー!」
「……」
サイロの様子がおかしかった。
彼女の背中から赤みのある光る何かがはみ出していたのを男は見つけた。赤は服に染み込み円を広げていく。女は後ろを振り向いて、血を吐いた。
バタンっ何かが倒れた音がした。彼は玄関に立つ男に目をやった。
「サイロ?」
男はサイロを見て酷く怯えていた。
「な、何やってんだよぉ!」
サイロはケタケタと不気味な笑みを浮かべ、男に猛突進した。
「ハハハ、ハハハ」
サイロは不気味に笑った。
気がついたときには、部屋中真っ赤に染まっていた。
ここにきたのは間違いだった。ごめん、ごめん。許してくれ。でも刺したのは僕じゃないんだ。
彼が友達を殺すまでの映像が僕の前で再生されていた。
「全部お前がやったことだ」
違う、殺したのはお前だ。
「俺は存在しない。俺はお前の幻覚だ!だから殺したのはお前だよサイロ!」
うるさいうるさいうるさい!僕は殺してない!お前が殺したんだ!
僕はナイフを何度も何度も振り下ろした。
「僕は、お前とは違う……」
モニターには男女の死体がひとつづつと男が1人しか写っていない。
「静かにしてくれ」
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