マガジンのカバー画像

「壊れた心のメロディ」

5
学校や、家庭環境、心が荒んで、疲れて。生きづらくなってしまった人へ。 ある繋がりのあるテーマをまとめたマガジンです。
運営しているクリエイター

#掌編小説

『沈む星、昏い未来(Sinking Star, Darkened Tomorrow)』続ける!毎日掌編小説第20回

 [1200]  カビと生ゴミが混じった匂いが、喉の方で痞えているように臭った。これは私が小学校に入学して半月してからの話だ。  凍りつくほど冷たい何かが足先から腰まで、腰から手の先まで登ってきた。  祖母に買ってもらった赤いランドセルはその時すでに鮮やかさを失っていた。  視線をほんの少し下に落とすと、赤と白のボーダー柄の子供用テーブルに置かれた、三百円が目に入った。ジリジリになっている髪が垂れ落ちてきて視界の九割が黒く染まった。 「ハズキ、あなただけは私の味方よ

続ける!毎日掌編小説。『水』

 痛かったのを覚えている。そうだ、私は殺された。ただただ深い海の底を見つめ思い出す。私は周りの水と一体化していた。  殺されるのは時間の問題だった。学校に行くのが怖かった。行けば肌に印を押される。トイレに閉じ込められて水をかけられた。恥ずかしくて、体は次第に溶けていくから、私が私でなくなっていくのを感じた。 「お前はゴミだ」  だからなんだ。そう思えるほど、それを腐るほど聞いた。耳がダメになるほどに。一番私がよく知ってる。私は今にもジュっと消えてしまいそうな家族のために何も