セフレだと認めたくなかった話①
大学1年のとき、地元の駅でたまたま中学の同級生に再会した。
あんまり話したことはなかったけど、なぜか会話が弾んで、今度遊ぶことになった。
特にお互いが好意を持っているわけでなく、ただの「異性友達」として何回か遊んだ。
けど何回目かの公園呑みの後、キスをしてしまった。
もちろんそこから展開は早く、次の呑みの後にはホテルに行ってしまった。
ただの「異性友達」じゃなくなった。
1回関係を持ってしまうとそれが当たり前になる。
そのうち、「行為が目的なんだろうな」って分かるようになる。
普通に遠出したり、談笑したりするだけで私は居心地が良かった。
もう好きになってしまったんだと思う。
自覚してからは「この関係が終わらないように」って必死に気を遣った。
もしかしたら今日で終わりかもしれない。
彼女が出来るかもしれない。
彼はなかなかのクズっぷりで、私の前でも平気で「この子とご飯いった~」
「この子と遊んだんだけど彼氏いるんだよね」と話してくる。
「私はなに?」
たった一言が聞けなかった。
彼はよく一発ギャグをかましてきて
「お前になら、こういうことできるんだよな~なんでだろ」って犬のような顔して笑ってきた。
「私の事、好きじゃないからだよ」
口にすることはできなかった。
彼には私のことを「特別な女友達」って勘違いして欲しかった。そして願わくば、「好き」って勘違いして欲しかった。
その後も曖昧な関係が続いた。
毎回、「付き合わないならもう会わない」って言えない自分が情けなかった。
いつかの帰りの車内でついに聞いた。
「私のこと好きじゃない?」
彼は驚いた顔をして
「好きだけど、付き合って、もし別れたら終わっちゃうから嫌だ。そのくらい大切」
って、いつもの犬のような顔をして眉尻を下げながら言った。愛犬の反省した顔みたいだった。
もし「クズ男語録」が出版されていたら、目次の前の方には絶対あるような発言だ。
「好き(都合いい所が)だけど、付き合って、
もし別れたら終わっちゃうから嫌だ(身体の関係が)そのくらい大切(俺の性欲が)」
そんな本を読んだことが無かったから隠された()に気づけなかった。
信じてなぜか納得してしまった。
「私は特別なんだ」
これが勘違いと気づくことができるのは数ヶ月先の話。
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