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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『プリンタニア・ニッポン』考察

迷子さんがMATOGROSSOに連載されている『プリンタニア・ニッポン』についての16話時点での考察です。

⚠️ネタバレが含まれますので注意してください。

2020/5/16追記:17話の更新、書籍化の発表とそれに伴う最新話(17話)と1話を除く全てのバックナンバーの削除が行われました。本来であれば記事に画像を複数枚挿入していましたが、現在公開されていないということから削除いたしました。そこで、台詞等の引用(『』表記)と、私の文章による描写の説明(<>表記)、それに何話何ページ(web連載時)といった情報(《》表記)をもって代用とさせていただきます。

開拓地

まず、「開拓地」関連の情報から見ていきます。

『汚染領域だから普段は施設から見るしかできなかったですけど・・・・・・』《8話5ページ》
<防護服を着て開拓地で作業をする人々(瀬田の回想)>《8話5ページ》
『2000年程度は環境の再生が短縮できるのではと予想されています』<「プリンタニア・プラン」に対する佐藤のコンサルの説明>《8話7ページ》

「開拓地」のうち「汚染領域」では防護服が必要なほどであり、「再生」が必要とされています。このことを念頭に次の画像を見てみましょう。

『沖縄開拓地 大規模工場発見即時破壊』<ニュースの見出し>《9話7ページ》
『工場内部にて製造されていた数体の残兵が逃走 評議会(解読不能)ると隣接の北海道開拓地、鹿児島開(解読不能)に注意喚起』<ニュースの小見出し><(解読不能)部分は他物体による画面の遮蔽、『工場内部にて製造されていた数体の残兵が逃走 評議会によると隣接の北海道開拓地、鹿児島開拓地(解読不能)に注意喚起』と推測できる>《9話7ページ》

「沖縄」、「北海道」、「鹿児島」という地名が出てきました。となると舞台は未来の地球(平行世界の可能性はありますが、無視します)ということになります。そして、「沖縄開拓地」と「北海道開拓地」が隣接していることから、大きな地殻変動が推測されます。先述の汚染の話とこれを組み合わせると、ある一つの答えが見えてきます。

核戦争

おそらく、漫画の舞台は核戦争後の地球でしょう。沖縄と北海道が隣接するレベルの地殻変動、数百年数千年を必要とする再生、全地球規模の核戦争が起こったに違いありません。

『国民No確認できません 保存対象です 分析運搬します』<瀬田の左腕を切断しようとする「残兵」>《8話3ページ》
『人ってよくペットに食べ物の名前つけてたんだろ?』<佐藤の台詞>『はい その事例は多く見られます』<佐藤のコンサルの応答>《3話8ページ》

このように、核戦争による文化文明の断絶も見ることができます。

さて、もう少し踏み込んで考察してみましょう。

評議会

『私は生活改善コンサルタント 人類のよりよい生活と種続進化促進・改善のため配備されています』<佐藤のコンサルによるすあまへの自己紹介>《3話2ページ》

これはコンサルの言葉ですが、そのまま「評議会」の意志ととっても良いでしょう。ここに、「種族進化」という言葉が出てきます。「種族進化」って何でしょうか。どんな環境でも生きられる体?超能力?

『進化のために鍛錬は欠かせませんよ 精神課題をこなし人としてより良くありましょう』<佐藤のコンサルが佐藤に対して「精神課題」を促す台詞。錠剤を示しながら発せられる>《12話1ページ》
『もうそんな時期か?』<佐藤の応答>《12話1ページ》
『自分を大切にできない者はいつか同じロジックを他者にも振りかざしかねません』<佐藤のコンサルの、佐藤に対する「精神課題」の振り返り>《12話9ページ》
『怒れてよかったよ』<「精神課題」に対する佐藤の感想>《12話9ページ》

答えとおぼしきものは「精神課題」の中に出てきます。12話で主人公に当てられた課題をクリアする条件は「自分を大切にする」です。自分を大切にする為の感情も否定されません。これを見るに、おそらく人類の進化とは、「善い人間になること」なのではないでしょうか。それが進化と呼べるのかという疑問はあると思いますが、とりあえず、「評議会」の目標は「『善い人間』を育てること」と結論づけて先へ進みます。

では、そもそも「評議会」ってなんなんでしょうか。それを考える為に少し寄り道をしてみます。

『ああ、さっき監視ネコが説明?してた』<佐藤の台詞>《5話6ページ》
『ごめんですんだら監視猫はいらん』<佐藤の台詞>《9話7ページ》
『ちょっと棟の監視猫のとこ行ってくる』<佐藤の台詞>《15話2ページ》

この世界には「監視ネコ」と呼ばれるものが存在します。(9話と15話では「監視猫」が登場しますが、9話以降に「監視ネコ」が登場しないので別存在ではなく表記の変更と見なし、私の方では以後「監視猫」で統一します。)監視猫は光沢のある筒状の猫型ロボットです。

『評議会は「そういう問題ではない」と抗議しています』<ニュースの音声><台詞の後ろに怒りを表した「監視猫」と同じビジュアルの複数体の存在のイメージが描かれる。これは「評議会」を表しているととれる>

さらに、「評議会」までも同様のビジュアルで表現されます。流石に「評議会」のメンバーが「監視猫」として街中に出張ってるとは考えられませんが、かなりの同一性があるようです。

『大きな猫はどんなに寂しかったんだろうと思ってね』<ニューチノー社CEOの台詞><荒廃した街のような背景の描写>《16話8ページ》
『大きな猫にはごりっごりに怒られた』<ニューチノー社CEOの台詞>《16話8ページ》

ここで最新話で提示された「大きな猫」の存在が大きなヒントになってきます。「大きな猫」は廃墟のようなところで寂しがっていました、そして今も高い立場で存在しています。「評議会」も猫で表現されていることからつながりは深いようです。以上の情報から、一つの結論にたどり着きました。それは

「評議会」=AI

成り立ちはこうです。核戦争を生き延びたAI「大きな猫」が文明を再建する。再建された世界は描かれているように超管理社会ではあるが、流石に一人では処理しきれないので自分の複製を複数作る。その複製たちが「評議会」である。「監視猫」と「評議会」の同一性や高度な情報網などは、全てがAIによる一つのネットワークで管理されていると考えると納得いきます。以後、「大きな猫」とその複製である「評議会」をまとめて「猫」と呼びましょう。

では話は戻って、この「猫」は何をしようとしているのか、「『善い人間』を育て」てどうしたいのかを考えます。

『現行人類に許されている労働時間の1日8時間分』<瀬田による「開拓地」の説明の一部>《10話3ページ》
『(前略)「かわいいからよろしい」などという短絡的かつ無責任な動機での生命の生成は対象への想像をあまりに欠いているのではないかト(中略)まあ私たちに言えたことではないですし(後略)』<「監視猫」あるいは「評議会」の、ニューチノー社CEOへの台詞>《16話4ページ》

10話と16話にそのヒントがあります。どうやら「今」の人間は「現行人類」で、「旧人類(仮にそうします)」とはなにかが違うようです。もちろん、「現行」は核戦争以後でしょう。また、「猫」は「生命の生成」を批判した後に「私たちに言えたことではない」と言っています。少し飛躍があるように感じるかもしれませんが、「現行人類」を「猫」が生成した、と考えることができると思います。理由は、少し上にあります。寂しいから。戦禍を生き延び、しかし主人あるいは友である人類を失ったAI「大きな猫」は寂しさから「人類の生成」に手を出した。しかしまた同じ間違いを人類が繰り返さぬよう、自らの作った人類は「善い人間」に「進化」するように管理している。こういうストーリーが見えてきます。

まとめ

核戦争による人類の滅亡、AIによる人類の管理という人類の敗北を描きながら、将来に希望を残す。そしてその希望は、理性ではなく、感情である。それがこの漫画ではないだろうか。以上16話までの私の考察です。ここまで読んでいただきありがとうございました。

最後に

12話、精神課題の夢に入った時に、評議会から主人公の名前/No.である「佐藤46」が呼ばれた後、「nn266e38」と謎の文字列が読まれてます。(追記:第22話で佐藤のコンサルのIDだったことがわかりました、どっかに出てたっけなあ 2020/10/05)これについて全くわからなかったので、興味がある人は誰か考察してみてください。また、作者である迷子さんのSNSアカウントはあえてチェックせずに漫画の内容だけで考察しました。SNSで何かヒントとなる情報が載せられているかもしれません、不十分な情報での考察であることはここで述べておきます。今度こそ終わりです。お読みいただきありがとうございました。

2021/8/29追記:公開してから1年以上経ちますが、最近ちらほらいいねを頂いています。そういえばつい先日、単行本2巻も発売されました。『プリンタニア・ニッポン』を読み、検索する人が増えているのかと思うと一ファンとして嬉しいばかりです。しかし未だにこの記事がこれほど読んでいただけているというのは、他に考察記事が殆どないということでもあると思います。とても考察しがいのある作品ですので、その点は少し残念です。しかし、かくいう私も考察を投げ出してしまっています。この記事を書いた時点では予想もしてなかった事実(猫とコンサルの関係など)も明かされさらに考察を深められそうなのですが、大筋はこの記事の考察が正しそうなままだというのがその理由です。つまり、私自身は実質の弾切れです。他の方の考察も読んでみたいので、誰か描いてくれないかなというのは強くあります。

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