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父母58歳にしての真実。


父と母は同じ中学に通い、仲の良い友達だったらしい。
父は勉強もスポーツもできる上、
少し不良だったことからモテモテだったとのことだが、
母は性格が取り柄でお洒落にも興味が無かったらしい。
父と、母の可愛い友人が付き合えるよう、
母がキューピットになったこともあったと。

また、父の家はブランド品を持つような商売人で、
母は畑で育ち1人で虫と遊ぶような毎日だったと。
全くも違う2人が、高校を卒業し、成人式で出逢い、
お互いに惹かれて、結婚に至ったと。

母は、ずっと疑問に思っていたことがあった。

父は土日になると、母方の祖母の家に行き
畑作業を手伝う。
特に売り物になる食物は無く、祖母の趣味程度で
している畑。
母が、
「そんなことせんでええんよ。お母さんが好きにやっとるだけやねんから。」と言っても、
父は言うこと聞かずに、30度越える夏も朝5時に畑に向かう。
裕福な家族だったからこそ、畑作業とは無縁で、虫が怖かった父から、毒蛇の写真が送られてくる。

去年、母方の祖母が亡くなった。
かなり認知症は進んでいて、畑を燃やして近所の方から警察沙汰になったこともあった。
卵は生で食べていたし、このご時世でも洗濯は外で手洗いをしていた。
もうそろそろ施設に、と母が思っていた時期に、
祖母は室内で苦悶表情なく静かにご逝去されていた。
最後まで、本当に子孝行な亡くなり方だ。

母方の祖母が亡くなっても、父は毎週畑に通っていた。
もちろん今も。
玉葱やさつまいも、レタスを作っている。

それにしても、、まだ現役で仕事をしていながら
休みの日までこんなしんどいこと何で?と、
父と兄がお酒を飲んでいた時、
たまたま一緒に居た私がふと聞いた。
「母が気になっていたよ。」とは言わなかった。

お酒で顔を赤らめた父が言った。
「お母さんは、2人姉妹の末っ子やろ。
本当はな、お母さんの上にお兄ちゃんがおったんや。
やけどな、お兄ちゃんが3歳の頃、家の後ろの井戸に
落ちて死んだんや。唯一の男、畑を守ってくれると
ばあちゃんも少しは期待しとったと思うんよ。
昔は子供3人なんて裕福じゃないと育てられんから、
2人産まれた時点でお母さんは産まれてなかってん。
お兄ちゃんがおったらお母さんは産まれてない、
でもお兄ちゃんの代わりになる、
あの畑を守れるんはわししかおらへん。
まあわしが勝手に守りたいだけやねんけどな。」

衝撃だった。
お母さん、お兄ちゃんがいたんだ とか
お父さん、そんな覚悟があったんだ とか。

これは絶対母に伝えたい、
お父さんに内緒よ!と母に伝えた。

母は笑いながら、
「ほー!そういうことね!あんな頑張らんでも!」と。

意外とあっけらかんとしてるわ、、、

と思いながらも
これだから父と母の相性はピッタリなんだと感じた。

父のような、言葉足らずではあるが行動で
思いやりを示してくれる人と結婚したら幸せなんだろうな。

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