「いつか」その日が来るまで

私はいま、祖父と祖母の持ち家に住まわせてもらっている。3LDKの家に1人、2人が生きてきた大切な家で。

数年前に祖父は亡くなった。祖母は認知症を患い、プロのケアを受けるために老人ホームへ入った。そして今、体調を崩し、病院で手当を受けている。

祖母には出来る限り週末会いに行くようにしている。会いに行けば、いつもそれなりに元気な姿を見せてくれるが、少しずつ痩せて弱っていっているのも感じ取れる。仕方ない、老いは誰も避けられない、必然なのだから。
だけどその度に考えてしまう、お別れの時が刻一刻と迫ってきていることを。人の死は逃れられない。それは私だって同じ。いつかは、大切な人たちと別れる日が来る。

「綺麗ね」、「凄いわね」、「頑張ってるね」。祖母はいつも、私の味方でいてくれた。優しくて大好きなおばあちゃん。
もう2度と祖母の優しい笑顔をみることができないかもしれないと思うと悲しくて堪らない。あと何回会えるだろう。せめて最期は穏やかに迎えて欲しいと祈るしかできない。

私は祖父が亡くなった時のことを悔いている。入院している時期、私は大学のテスト期間だった。母がこの日に面会に行くと言っていたその日はテストの前日で、母は私に気を遣って今回は来なくていいよと言ってくれた。私は単位を取るために、その日は勉強に専念することにした。だけど、そと後わたしは2度と祖父に会うことはできなかった。
あの日会いに行っていれば、もう一度祖父の顔が見られたのに。どうして、どうして。

大切な人には会いに行くべきだ。ありきたりな言葉だと笑われようがかまわない。いつ会えなくなるかなんて、本当に誰にもわからないのだ。

愛の言葉も感謝の言葉も、たくさん伝えなければ後悔する。絶対に。
仕事だって趣味だって大切な人生の一部だ。だけど、愛する人たちと過ごすかけがえのない時間も大事にしなければ。恥ずかしがらず、たまには素直に言葉で行動で表現しなければ。

祖父と祖母の過ごした家で眠る夜、そんなことばかりが頭によぎる。

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