サンジ、ベルメール、ゲンゾウのリンクとナミの気持ち
ベルメールはナミの育ての母だ。
フランス語で「義母」を意味する他、
la belle merで美しい海を表す。
本編では既に故人となっており、彼女はナミとノジコの回想の中でのみ登場する。
足で攻撃し、咥えタバコに料理の描写。
自分の命よりナミやノジコへの愛情を優先してしまうところや、「正義」を掲げる海軍だった事も含め、
ベルメールは非常にサンジとのリンクが多い。
また、ナミの父親がわりだったゲンゾウもサンジと同じ台詞を言うシーンがある。
以前の記事でも触れたが、ゲンゾウが頭に差している赤い風車(フランス語でムーラン・ルージュ)はパリに実在するキャバレーであり、サンジのキャラソンのタイトルになっている。
何故サンジはこんなにもベルメールやゲンゾウと結びつくのだろう?
ナミにとってサンジは親のような存在という事なのだろうか?
だがサンジとナミの年齢差はほとんどないし、ナミがお父さんと呼ぶには、サンジは若過ぎるような気がする。
ナミからサンジへの気持ちを考えるため、
・キャラクターの感情の起伏が大きいWCI編
・ナミのエピソードであるアーロンパーク編
を読み返した。
WCI編ではナミの独白や心理描写が全くないので、
「表情」と「台詞」を中心に考えることにした。
▪️表情のリンク
比較するとわかるが、WCI編のナミは小さな女の子のような表情がとても多い。
ベルメールとサンジの大きな共通点として、ナミの前から「いなくなってしまう」「もう会えなくなってしまう」(WCIではその後奪還に向かうが)がある。
「ずっと一緒にいてほしい」。
ナミもノジコもベルメールが亡くなる直前にわがままを言う。
この出来事の直前、ナミはベルメールと喧嘩をしていた。
ノジコの「ベルメールさん、ナミは本当はあんなこと思ってないよ?!つい口をついて…!」
という台詞からも、ナミは喧嘩を売るような口調で相手にものを言われると、それに乗っかる形で言い返してしまう、感情的になりやすい一面がある。
その後ゲンゾウのフォローで本心を口にするが、
ナミはベルメールに遠慮して本当の気持ちを言えていなかった。
ベルメールの死に際にようやく、ナミは年相応の子供らしい「わがまま」として、心からの気持ちを口にすることが出来たのだった。
ここでのわがまま=「相手に素直な気持ちを伝えること」
「わがまま」の描写は他にもある。
ルフィの台詞からも、
「相手に素直な気持ちを伝えること」
これがWCIのテーマの1つになっているように思う。
ナミは
・好きな人ほど本音を言えない
・感情に身を任せ本心と真逆の事を言う
対するサンジは
・大事な人ほど本音を言えない
・理性で本心と真逆の事を言う
2人とも「大事な人ほど本音を言えない」ところが共通していて、一件落着しても実は和解をしていない=本音を言えていない。
サンジはプリンの前ではボロを出さず、優しく、王子様のように描かれていた。
しかしナミの前ではサンジはなかなか同じようにできない。
サンジが離脱した時もナミだけ泣いていたし、平手打ちやプロポーズされたと聞いた時のショックを受けたような表情など、ナミもサンジが絡むと感情的になりやすい部分がある。
何故2人とも他の人と同じようにいかないのだろうか?
そしてまだ口に出来ていない本心とは何なのだろうか。
ここでサンジの結婚相手プリンを思い出して欲しい。
プリンの感情の裏返し、本当はサンジが好きなのに真逆の事を言ってしまうという恋に不器用な描写は、まさにこの象徴ではないだろうか?
最後に、サンジが船に戻ってきた場面。
このコマには台詞がないが、ナミは小さな女の子のような表情でサンジを見つめている。
サンジは作中でナミに度々「好きだ」と告白しているが、この時は何故か「おれもすきだ」と、相手の言葉に受け答えする形で言っている。
・「おれもすきだ」という台詞
・コマを跨いでいるハート
・ナミの表情とベルメールへの「わがまま」
・恋に不器用なプリン
これらを合わせて考えると、
「ずっとそばにいて」「いなくならないで」
「一緒にいてくれなきゃやだ」
ナミは本当はこんな気持ちがあるのではないだろうか?
今後2人が素直な気持ちを口にして仲直りできるか楽しみだ。