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散文詩的な呟き

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日常の一コマを短い映像のように切り取っています。
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2017年11月の記事一覧

マスカラが落ちるとき

右の手でポンプを三回押す。 両手を擦り合わせじっくりと温める。 とろっとしたオイルが掌全体に広がり、顔に優しく触れる。 擦らず、傷つけないように。 霞んだ空気が水滴に濡れる鏡に映った。 重ねたマスカラが下まぶたに太めの線を落として、 目尻にアイシャドウが滲む。 首筋から滴るお湯が鎖骨まで滑り落ちて止まった。 まっすぐと見据える君の目線が、堪らない。 (そんな写真を撮ってみたいと思いました)

月と散歩

 夕方になって、たまたま外にでた。今まさに東の空に浮かび始めた月に目を奪われ、誘われるがまま散歩に赴いた。  田んぼ道を一人、とぼとぼと歩く。  意味もなくスキップしたり、   あぜ道を全力で走り抜けてみたり、  鉄塔の横を通り過ぎる動画を撮ってみたり。  西から飛んできたコウモリが頭上を通り過ぎた。黄金色に輝く月に向かって飛んでいくその姿は、漆黒の影を作り出し、月のコントラストに私は見惚れていた。  掘り返された田んぼの所々に、一昨日降った水が溜まっている。水に