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木の葉が揺れる


実家の周りにはいろんな木があった。

桜の木、杉の木、銀杏の木、
梅の木、桃の木、豆柿の木。

名前の知らない木もあった。

春になると花が咲き、
花が散ると若葉が風に揺れた。

さらさら
さらさら

葉と葉が重なる音が好きだった。

それは、
昼寝をしているとき
わたしの頭を指先で撫でる
母親の手を思い出させる。

子どもの癖のない柔らかな髪が
さらさらと指の間を抜けていく。

頭の丸みに沿って
優しく触れる指先の感覚は
くすぐったくて、気持ちがいい。

目をつむっていても分かる
母親のまなざし。

わざと寝たふりをして
撫でてもらうこともあった。

暑い夏の日は、
汗をかきながら寝るわたしに
うちわで風を送りながら
頭を撫でてくれた。

大きくなってからも時々
「髪の毛さらさらして」と甘えた。

そのさらさらは、
木々が奏でる音とリンクして
わたしの記憶に残り続ける。

さらさらと
木の葉が揺れるたびに思い出す。


母親の愛情を、
愛情の伝え方を。

2023.3.1
夜、布団の中で思い出したこと

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