的外れなことばかりしてるから愛しい(自由律俳句)
自我らしきものを獲得した10代の半ばから、ずっと変わった環境にいた。学校にも変わった人ばかりいたし、家族も少し変わっていた。変わった人や出来事に囲まれているから、自分が変わっているということにも気付くのも遅かった。
色々な人間がいるのが当たり前だから、個性という言葉も逆にピンとこなかった。わざわざ個性などという言葉を持ち出さなくても、誰もがまともで、誰もがおかしくて、まともか否かはあまり関係なくみんなそれぞれに良いやつで、それだけの話だった。
時にぶつかったり抑圧されたりもしたけど、全体として見れば天井も壁もなく、みんな行きたい方向に行きたいだけ歩いて、疲れるか飽きたら止まる。少なくともそうやって生きているように見えた。
映画「ナポレオン・ダイナマイト」にはひとりもスマートな人物が登場しない。良いやつもあまり報われないし、悪いやつに天罰も下らないけど、ただそれぞれのおかしな日常がツッコミ不在でゆるゆると進行していく。まともに見えるやつも変なことをするし、変なやつもたまにまともなことをする。
ここから先は
2,860字
¥ 500
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?