触媒

フィクションです。

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最近の記事

【1分小説】父とジャム瓶

うちの父って、瓶の蓋を緩く閉めるんですよ。 毎朝ヨーグルトに入れるブルーベリージャム、結構大きい瓶だから、きちんと閉まっていないと持つ時に危ないんです。蓋がついてる系は全部そう。だからペットボトルとか、お弁当のスープジャーとか。 僕、高校の時実家で弁当係だったんですけど、洗い物出された時も緩く閉まってて保冷バックに若干染み出してたんですよ、味噌汁が。一回ほんとに言いましたけどねちゃんと閉めろって。 でもそんな父なんですが、握力は97kgあるんです。ガチです。 ラガーマンでし

    • 【マイクテスト】侏儒の言葉-星 / 芥川龍之介

      マイク買ったので朗読のテスト。素人です、よしなに。

      • 【10秒小説】your name

        「これってあなたのプレイリスト?」 「そう。いいよねこの曲。」 いつもの快活な笑い声はほんのり恥ずかしそうに 「うん!いい曲…ほんと。あの…名前、聞いてもいい?」 「あ。ええと、『プリーズ』って。カタカナで。」

        • 【1分小説】初夏の夜の夢

          声は思い出せない。 髪は肩に触れないくらいに切り揃えてあって 顔はぼやけてよく見えないけど多分美しいひと。 背は 私より高い。 (ひさしぶり) 彼を見る。 声はきこえない。 髪は肩に触れないくらいに切り揃えてあって 顔はぼやけてよく見えないけどやっぱり美しいひと。 背は 私のほうが高い。 「ごめんなさい」 彼が笑う。

        【1分小説】父とジャム瓶

          【10秒小説】Aspirin

          私は本が好きな方だけれど、 新品を血眼になって探すみたいなことはあまり、したことがない。欲しいと思うものは古本屋で大抵手に入るからだ。 今日も私が何度も読み返している小説が5.6冊積み上がっていた。

          【10秒小説】Aspirin

          【1分小説】encore

          ずっと耐えていました。劇場の香りがして、席について、舞台を眺めてしまったらもう、だめでした。いつも夢で見る景色。死ぬほど逃げてきたつもりだったのに。私はその時からすこしも、離れることができていませんでした。 怪我をきっかけにバレエから離れ劇場を訪れるのは久しく、というか、劇場に足を運ぶのを無意識のうちに避けていたんだと思います。友人に誘ってもらえていなかったらたぶん、行かなかった。客席の傾斜を、香りを、リノリウムと踊る足音を、今にも観客を喰らおうとする「舞台」という重力を、

          【1分小説】encore

          【1分小説】Marginalia

          "せかい"という本を読む その内容は私にとってとても難しくて 1年1単語知ることができたら 上出来だと思う 私の"せかい"の全ては 私の感覚器官が受け取ったものだから それ以外を知ることができない 私は知っていることしか知らない それでも私はその知ったことさえ 手のひらから零してしまうから 書き留めようと思った 手のひらから滴るそれで “せかい”の”よはく”に 濃いシミをつくろうと思った

          【1分小説】Marginalia