【レビュー】 カローラアクシオ 2012年モデル 2015年 M.C中期型

2012年モデルですが,2015年にマイナーチェンジを果たし新開発の2NR-FKEが搭載された1.5Gになります。

外装の評価です。3BOXを強く意識させるフォルムです。フロント,ミッド,リアとそれぞれ半ば独立したような形状です。フロントマスクは大きく口を開けて笑っているような表情ですので好みが分かれると思います。リアランプ部の意匠は,機能性を重視した形状をしています。とても大きくどの角度からでも視認性が高いです。
空力処理は中途半端に感じます。ボディ上面の風と側面の風がぶつかることによる渦の発生を少なくするため,フロントウィンドウとAピラーに段差が設けてあります。これは,最近の車ではフロントウィンドウが直立しているバンやトール軽自動車,ミニバンなどを除けば小型車から大型車まで共通して取り入れられている空力処理です。他にも,ドアミラーとサイドウィンドウの間や,リアランプの側面にフィンが設けてあります。これは,フィンに流れてきた風をあえて剥離させ,小さな渦を作ることで,フィン後方の凹凸や,急拡大,又は急縮小による大きな剥離によって生じる強力な渦の発生を抑えているのです。
こういった,ある種トレンドのような空力処理に関してはしっかりと作られているのに対して,その他の部分が杜撰だと感じます。
例えば,フロントバンパーサイド前端には整流面が設けてありますが,前端から後端にかけてもう少し角度をつけた方が良いと思います。現状では,バンパーサイドを流れたきた風に角度がついていないため,タイヤ前端面やホイール側面にモロにぶつかってしまうと思います。
ホイールアーチとタイヤのクリアランスは広いです。これでは高速走行時にタイヤハウス内に風を巻き込んで空気抵抗が増加すると共に,リフトの原因にもなるので操縦安定性が悪化します。リアウィンドウは立っているので,ルーフを流れてきた風がルーフ後端で剥離し,リアウィンドウとトランクリッドのちょうど境目辺りで強力な渦が発生して負圧になっています。

内装の評価です。
シート表皮はファブリックです。シートそのものは小ぶりですが,表皮は適度なフリクションがあります。形状はあまり良くないです。腰部のサポート性が低く,長時間着座しているとシートバックと身体の隙間が広くなってくるので身じろぎしたくなります。この程度の密着性しかないのであれば,4時間連続といった長距離長時間のドライブは厳しいと思います。
シートの前後スライドは,調整ピッチをあと0.3メモリだけ狭くすると良いと思います。現状では前後の位置決めが若干しづらいです。
シートリフタの調整幅は十分です。
ステアリングはグリップ感や表皮のフリクション,真円度等満足できる水準です。
チルトとテレスコピックの両方が備わっていますが,可動範囲が狭いです。シート位置をペダルを基準に固定した状態で,テレスコピックを一番手前まで引き出してもステアリングの位置は遠いです。
ペダル配置は落第です。左寄りのペダルオフセットが明確に存在します。オフセットによって生じるペダルの踏み間違えを防止するためにアクセルとブレーキに段差が設けてありますが,これはむしろ操作性を悪化させるだけなので,もっと根本的な解決を望みたいところです。
シフトセレクタの位置は遠めだと思います。センターコンソールレスデザインですので必然的にシフト位置はドライバーから遠くなるのでしょう。
サイドブレーキは,オーソドックスな手引き式です。足踏み式はフットスペースを侵食するだけで操作性も対して良くないので,このクラスの車は手引き式がベストだと思います。
ドリンクホルダ周りの設計が杜撰だと感じます。ホルダ上部にベンチレーションの操作系が張り出している影響で,ドリンク本体を手前側に傾けて取る必要があります。背高系の非密閉式ドリンクであればこのときに溢れる恐れもあります。さらに,手の甲が内装材に接触するため手の可動範囲が圧迫され,運転時に手探りでドリンクを取る際は非常に気を使います。
助手席は,シート座面の角度が水平に近く乗員の身体が安定しません。
後部座席の座り心地は悪くないです。シートバックはフラットに近いですが意外にホールド性が高く,このクラスとしては必要十分以上の実力を備えていると感じます。
問題なのは頭周りです。ヘッドレストは固定式のため最適な高さまで引っ張れませんし,頭頂部はルーフと接触してしまいます。
トランクスペースは広いです。後部座席は非可動式ですので長尺物を積むことは不可能ですが,旅行用のバッグやスーツケース,衣装ケース等の大型の荷物は余裕で入ると思います。

ボンネット裏にはインシュレータがあります。ボンネットはスチール製ですからこれは熱害を回避するためです。エンジン上部にはカバーが装着されています。壊したら嫌なので外してはいませんが,特段静音に配慮した作りでもなさそうです。
ストラットハウジングは,バルクヘッドと繋がっていない旧世代の構造です。
タイヤは175/65R15で,速度記号はHです。剛性が低く,コストと燃費に特化したSタイヤ(悪い意味)でないのは高評価です。
ボディの建て付けはよくありません。ドアパネルとボディパネルのクリアランスは,セグメント的には同格のプリウスと比べても広いです。
基本的に,ボディのパネル間クリアランスは構造材の成形精度に左右されます。成形精度が低いと,組付け交差をそれだけ大きく取らなければならず,結果としてクリアランスが広くなってしまうのです。
こういう細かな部分からも,ヴィッツベースのBプラットフォームが使用されている影響が確認できます。

感性評価です。
ブレーキを踏んでエンジンをかけます。この瞬間からステアリングやシートに小刻みな振動が伝わってきます。これはマウント容量の不足です。走り出してしまえば気になりませんが,停車中は絶えず振動し続けますのでそれなりに気になります。
シフトをDレンジに入れ,少しだけアクセルを踏んでみます。応答遅れもなくスーッと走り出します。極めて普通に操作できます。。
今度は,アクセルを一気に全開にします。1秒近く遅れてエンジンが反応します。これは,低燃費のための過大なEGRとハイギア制御によって,アクセルを踏んでからEGR量を下げ,ローギアにシフトする一連の動作故のレスポンスラグです。アクセルレスポンスは,一般的に0.3秒のラグが最適です。
敏感でも鈍感でもない塩梅が0.3秒なのです。高速道路の合流や追い越し,一般道でも急に加速する必要に迫られるシーンは存在します。こうしたシーンでの操作性は決して無視できるものではないため,改善が必要だと思います。
乗り心地はシティーユース的です。
バネは非常に柔らかいです。加速,減速時に急激にGが立ち上がるような場面ではスクワット,ダイブが非常に大きいです。したがって,ABSの介入も非常に早いです。
60km/hまでは直進安定性,ショック吸収性はそこそこですが,問題は100km/h以上の領域です。
上屋の収斂性が非常に低いです。高速道路のジョイントや補修跡等の急起伏を乗り越えた際,上下に2,3回揺すられます。
バイパスで逃げた後のメインバルブで発生する減衰力が足りないのだと思います。
ステアリングレスポンスも若干過敏です。
これも,低速時は問題ありませんが,100km/h以上の高速域になると顕著になります。ステアリングの操作に対してボディがタメ無く反応します。常にステアリングを握って補舵する必要があります。
ステアリングは,操舵時にフリクション感があります。EPSはおそらくブラシモータでしょう。最近ではLTAやパーキング・アシスト等の運転支援系の普及で,コンパクトカークラスでもブラシレスモータが使われるのが一般的ですから,それらと比べると操作感の面で劣ります。
これでは130km/h以上での高速走行は全く安定しないと思います。
ブレーキタッチは,踏圧よりもストローク優先型です。
踏圧反力は無いに等しいです。踏圧型かストローク型かはドライバーの好みにもよるので一概には断定できませんがこれは過剰です。高齢者や女性など脚力の弱いドライバーのことを考慮してのことなのかもしれませんが,ここまでストロークを優先させるセッティングであると,踏み込み量のコントロールに無駄な力を使うことになります。
反力を増加させ,無効ストローク域を含めてペダルストローク量を現状の2/3程度にすると扱いやすくなると思います。
ブレーキの前後バランスとしては,前効きが激しいタイプです。もう少しリアを積極的に使うセッティングにすると,上屋の姿勢変化も減り,ABSの介入も遅らせることができるので安心感が増しますし,主にアクティブセーフティでの安全性向上に繋がるでしょう。先のスクワット,ダイブはこのブレーキバランスに依るところも大きいと思います。
ロードノイズは路面状況に大きく左右されます。車体側の遮音性能が低い証拠と言えます。荒れた路面では,常にザラザラ感がつきまといます。
風切り音も,フロントサイドウィンドウ辺りで大きく音を立てています。
エンジン音に関しては高評価です。車体側の遮音が杜撰なので入ってはきますが,全く嫌な音ではありません。フル加速時の勇ましい音はむしろ聞いていて気持ちが良いです。
高速走行時は,変速機のレシオカバレッジが広いようで低回転に抑えられるので,加速をしない限りエンジン音は全く気になりません。
エンジンのメカニカルノイズはあまりありません。
熱効率36%の効率特化型エンジンですが,制御自由度が高く燃料の蒸発潜熱の影響で圧縮比も高めやすい筒内直接噴射,いわゆる直噴ではなく,燃料と空気のミキシングの高いポート噴射式であることが大きく関係していると思います。最近の直噴採用の高効率エンジンは,NAだけでなくターボも含めてインジェクタの作動音が非常に大きいので,それが無いのは好印象です。
補機ベルトの張力は,オートテンショナーで自動調整されていることもあり冬季の朝一番などでも鳴きは生じません。
ドア開閉時の質感は低いです。ウィンドウレギュレータの支持剛性が低く,ドアを閉めるとガラスがビビリます。チェックリンクの反力は丁度よいですが,妙なフリクション感があります。開閉時の質感を下げている理由の一つです。

全体として,「ファミリーカーとしては」という前置きがあれば合格です。
値段と車格に対して安全支援や居住性,積載性がワンランク上だと思います。反面,走りの楽しさや安心感といった感性の部分での評価は低い結果となりました。
Bセグメントベースのボディでも後部座席の居住性は良いですし,荷物もたくさん載ります。低価格でマトモに安全性があれば走りは不必要という人にはピッタリな車だと思います。
デザインはフォルムの影響であまり凝った見た目はしていませんが,若者から高齢者まで年齢を問わず使用できるのではないでしょうか。

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