見出し画像

幽香

とてつもなく記憶に残った香りを
ごくたまに、不意に思い出すことがある。


はじめて会ったのは、大学の講義。
最初の会話はなんだっけ

ああ、「この課題なんだっけ」だな

いつも部活のメンバーでまとまってた君から
不意に言われた一言に驚きを隠せなかった。

大したことも話さず、そこから疎遠になり
気づけば季節は秋になり
大学ではあんまり考えられないような
実習の季節になった。

やる気のない君と、
やる気しかない教授たちの対比がおもしろい。

グループ分けを行い、
実習に向けての講義を受けることになる。

ザワザワとうるさい講義室に
実習に向けて浮き足立つ友達たち

「よろしく」

時が止まる

心地いい声と、香りが隣を横切った

「あ、よろしく」
それだけ返すのに必死で、記憶に残ってる

「リーダー誰する?」
「誰でもいいんじゃない?」
「リーダーって何すんの?」
「点呼ぐらいでしょ、多分」
「向いてるんだし、私ちゃんやりなよ」

いやいや向いてないし。
全然やりたくないよ、私は。

みんなが口々に話を進める中、
君はこういったんだっけか

「押し付け合うならやるよ別に」

ぶっきらぼうだけど、
場を沈めて手を差し伸べてくれた人

大したことじゃない
普通のグループ内での会話

なんだかずっと覚えてて。

実習中はたいしてやり取りもしなかったけど、
リーダーなんてしなさそうな君に実習の後

「リーダーありがとう。
こういうのやらない人だと思ってた。」

別に送らなくてもいいラインを
つい、あの時つい送っちゃったことが
きっとこの香りを忘れられないきっかけ。

たかがリーダーだったけど、
なんだかあの時はされどリーダーで
今言わないと後悔するってなんか思ったんだっけ。

そこからはとんとん拍子

私がスキーでぶつかったから
携帯が使えなくなっちゃった君が
わざわざ修理前にパソコンから連絡くれて

「携帯壊れて連絡取れなかったけど、
これだったら取れるね。遅くなってごめん
会って直接言いたいけど時間がかかるから
好きだよ、一緒にいよう」って


そんなことしなくていいよって思った気持ちと
そこまでしてくれるんだっていう満足感で
あの時は心がいっぱいになった。


結局一緒には今いないけど、
ちょっとの勇気ときっかけで
私だけの君といる時間ができたんだよなあ

一緒にいる時の君は
いつもどこか男っぽい匂い(抽象的だけど)

香水っていうか、体臭?

体臭ってなんかくさそうだけど
そういうことじゃなくて
その人独特の香りがなんかずっとすきで
抱きしめられながら
たくさんすんすんした記憶も。
(超変態じゃん)

いつのまにかその香りは私の元にはいないけど
ふと振り返ったら苦くもあり、幸せな思い出

今どこで何してるんだろう
元気でいますように

別に今は人としてとか
男としてとか
全く好きじゃないけど、
君の香りはなんだか好き。

街で振り返ってしまうぐらいには
君の香りが好き。

優しくて男らしくて強い香り。

魅惑的な香りって意味があるらしいよ、幽香

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?