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『世界はデザインでできている』感想

#教養のエチュード賞 で文章を読んで感想までくださった嶋津亮太さん、が、構成を担当された『世界はデザインでできている』(秋山具義・著)の読書感想文を募集なさっていたので「嶋津さん普段どんな仕事してる人なんだろう」という好奇心も手伝って、はーい、と挙手して本を送っていただきました。約束通り感想を書かせていただきます。と言っても当noteは(小説も含め)多くて数百ビューの、つまりは対人というよりは対自分で書いている「公開された日記帳」のようなものなので(そして嶋津さんもそれをご存知だと思うので)「宣伝するゾ」という気概はなく、いつも通り生活の備忘録の一環として記させていただきます。よろしくね。

さて上記の理由から(そして単に不勉強なので)著者が何者なのかも知らない状態で読み始めたのだけど、まあまず日本に住んでいたら彼が手掛けたデザインをみたことのない人はいないだろうというような、第一線で活躍されているアートディレクターの方であることが読み進めるうちに判明した。秋山さんの名前を知らなくても秋山さんの生み出したデザインは我々の日常に当たり前のように溶け込んで明確に世界を構成しているわけで、まさに『世界はデザインでできている』のだなと腑に落ちる。アートディレクターってなに?という話は本にちゃんと書いてあるので譲るとして、あ、そう。ちゃんと書いてあるの。親切なのだ。親切さはこの本の大きな特徴であって、まず文章が平易で、おそらく小中学生でも困難なく読める。もしこれが当時の国語の教科書に載ってくれていたら私、大学以降パワーポイントを作る場面で途方に暮れることも無かったんじゃないかしら。これは大人向けの本じゃないってことが言いたいのでは全くなくて、デザインにとって”わかるように伝えることが何よりも大切”という筆者の大きな主張が著作自体にはっきりと体現されている、というのが一つ。そして美術の成績が万年「可」であるような、「デザインって美大の人のものでしょ」という私みたいな人間にとっても物の考え方を教えてくれる実用書になりうる、というのがもう一つ。(どちらかと言えばデザイナーとして食べていきたい人向けに書かれてはいる印象はあるものの。)

「デザインの敗北」という言葉で検索してみると結構皮肉で面白いのだけど、第三者目線だから面白がれるのであって当人間では重大問題である。トイレのマークがおしゃれすぎてどっちにあるのかわからない、なんて今すぐトイレに行きたい人には致命的でしょう。ある伝えたいことがたった一つあるとき、伝え方は無限にあって、上手に伝える人のことを「センスある」という言葉で片付けがちなのだけど、伝え上手な人って実は徹底的に考えているのね、ということがよくわかる。就職活動中、知人が「面接ではゆっくり喋れ」とだけアドバイスをくれたことがあって、喋る内容についての言及ではないことにびっくりした。早口は聞き取れない、聞き取れても理解できない、理解できても信用できない、からだそうだ。「自分のやりたいことを見つめ直して~」というアドバイス(もちろんそれも大事だけどさ、そんなこと皆すでにやっている)よりもよほど実践的でありがたかった。仕事をバリバリこなす友人にその話をしたら「うん、僕も喋るスピードには気を遣っているよ」と言われさらにびっくりしたのだった。ぼんやり生きている間にスゲーひとたちは頭フル回転で生きているんだわ、と焦ったものだけど、『世界はデザインでできている』を読んで似た気持ちになった。え、あのお馴染みの食品パッケージってそんな深く考えて作られていたの、みたいな。私ももうちょっときちんと考えて生きようかな、気が向いたら!なんて思ったのでした。

中学生ぶりの読書感想文楽しかったです。本に限らずTwitterの140字、で完結しない感想を書くのも自分のために大切だなと改めて。昨晩一気読みし、読み返さぬままに書いたので、何か間違いがあればご指摘くださいませ。

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