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愛用のもの

 20代の前半にイベントの企画や設営などをする会社で働いていたことがあって、そこではイベント以外の業務として看板製作や広告関係もやっていた。従業員は8人ほどで、繁忙期にはアルバイトを雇うといったところ。
 看板をつくるのに、よくカッターナイフを使う。いくつかのメーカーの、いくつかのモデルを試したところ、私がいちばん使いやすかったのが画像のカッターナイフ。

 現場の仕事のない日であってもボールペンや鉛筆、三角スケールやメジャーにマスキングテープ、それからこのカッターナイフを携帯していた。とにかくどこへ行くのでも、ないと不安なので荷物にいれるのがクセになってしまっていた。ある日、旅先の空港でこのカッターナイフを没収されてしまった。

 遊びに行くときには、カッターナイフを荷物から出すというのを覚えるまでに、この愛用カッターを2本犠牲にした。

 もう、その仕事から離れてずいぶん経つけれど、いまだにこのカッターナイフでないと落ち着かない。それなのにこの製品がなかなか見つからなかったりする。廃盤ではないみたいだけれど、もっと「進化した」カッターナイフを扱う小売店が多くて置いていない。この黒いボディーのものはわざわざ取り寄せたもの。

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OLFA CUTTER MODEL A/替刃はNTカッターの30度

 そのイベント屋の仕事はたのしかった。小さな看板屋さんに丁稚に行かせてもらったこともある。泥まみれになって屋外用のテントを張ったり、まだ早朝暗いうちから選挙ポスターを掲示する看板を取り付けまくったり、すごく高いところにフラッグをつけて周ったり、深夜のパチンコ店の仕事でシンナーに酔いそうになったり、張りぼての白鳥をつくったり、徹夜仕事で3日間家に帰れなかったり(母親が心配して会社に電話をかけてきた同僚もいた)。たのしかったけれど、若くないとできない仕事だった。懐かしい。

 左端の折りたたみ式のは肥後守。私たちが小学生ごろの工作用ナイフは、木製の柄の小刀だったけれど、父親くらいの世代はこの肥後守というのが一般的だったみたいで、欲しいと思っていた。ある日、父の同級生のSHさんが、近くでやっていた物産展で見つけたといって買ってきてくれた。うれしいなー! でも用途と言えば鉛筆を削るか、ヒモを切ったりするくらいで、工作もしないのだから使い道について欲求不満ぎみ。
 安曇野に住む友人が言っていたけれど、友人の子どもたちが通う小学校では、いまでも肥後守で鉛筆を削らせているそうだった。いい小学校だとおもった。

 右端の鋏は、これもSHさんからのいただきもの。どこで手に入れたのか、とても姿のいい小型の鋏で気に入っている(見えづらいですね)。

 私は保育園に通う頃から、色んな刃物を使ってきた。高校では木工なども学んだので、砥石も使った。刃物を研ぐのはきもちがいい。
 子どもに刃物を持たせるのは危険だとか、今の時代は言うのだろうか。使い方を知らない方がよほど危ないので、小さなころから使い方を教えることは悪いことではないとおもっている。

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