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二鶴のコーヒー

 ちかごろ機会をみつけてやっていることの一つで、コーヒーとチョコレートの相性を探るというのがある。ずっと前に一度やって、それきり風にのって谷間をただよっていたのが舞い戻ってきたのである。
 今回はそのときとは違った気づきもあって、もういくつかの試みを続けたいし、今日はコーヒーとチョコレートというテーマについては書かない。

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 父の住まいのそばに、二鶴という定食屋がある。なかに入ったことはないけれど、外観からいっておそらく大衆食堂という分類でよいかとおもう。
 店の入り口の外には日替わりの献立を書いたスタンドが立っていて、そこに書いてある文字がいつも気にかかって仕方がない。そこには必ず「コーヒー付」と書いてあるからだ。
 ある日の日替わりは鶏ももの唐揚げで、やはりコーヒー付で値段は780円。どうして定食にコーヒーを付けるのか、私としてはそこが引っかかるわけである。

 ところでいつものようにここでどうでもいい話題を繰り出すが、ずっと前にとんかつ定食を食べていたところ「緑紗さんって定食顔よねえ」と言われたことがあったのを思いだした。顔面のつくりと料理の提供形態とを結びつけるというアプローチは初めてだったので面食らった。

 話を戻す。
 鶏ももの唐揚げに限らず、定食というご飯と汁物、そしておかずで構成される食事にはコーヒーは合わないとおもう。食後、少し時間があいて店を変えてというのならそうすることもあろうかとおもうけれど、定食のお盆が下げられたあとにコーヒーが出てくるのはなんだか違和感がある。二鶴は店構えが和風であるし、たとえ日替わりのおかずがハンバーグであってもちょっと似つかわしくない。
 ここでハンバーグを出したのは、書きながら洋食屋だとコーヒーがついてても違和感がないことに思い至って、急に迷いが生じたからである。勢いで書き始めるとこうなるのである。
 洋食屋のメニューの中にも定食風なのもあるし、そしてそれを言い出すとファミリーレストラン形式のドリンクバーなどとなるともう無法地帯であるし・・・と弱気になってきたけれど、とりあえずそこのところは無視することにして、食べ物と飲み物の相性のことに移ろうとおもう。

 大衆食堂のようなところで食事をとる場合には食後の飲み物はお茶がいい。コーヒーは油っぽさを浚ってくれるようなところもあるから、揚げ物のあとでもいいという人もあるかもしれないけれど、それなら緑茶やほうじ茶だっていいし、というかむしろその方が合う。茶葉の持つ風味は和食の味わいを損ねないし、お米の粘りだってとってくれる(お茶が飲みたくなってきたね)。

 二鶴がコーヒーを付けるのは、そうすることでお得感をもってもらおうという意図からだろうとおもう。「お茶付」で同じ値段だと別の店に流れていくかもしれない客をとり込みたいからだとおもう。わからないでもないけれど、やっぱり二鶴のような店はコーヒーつけなくていいのにね、というのが正直な気もちである。
 おまけ効果でお客が増えるのなら店としてはやるのだというのも生き残る手段の一つなのかもしれないけれど、食べ物と飲み物の相性というところはあんがい大事ではないか。

 チョコレートとコーヒーの相性を追求することを始めてみたことから、「合う」とはどういうことか、どこにポイントを置いて検証するか、ということをいくつかの視点から考えたとき、そんなことを思った。

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今日の「ししゃも」:相性といえば、長年豆ごはんのおかずには一体何が合うのだろうという疑問を持っていたんだけど、Kさんの「ししゃも」という返答に目からウロコがこぼれました。

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