#82 柄 2021.03.20.Sat.

土曜日。休日。

東京へ単身赴任中の父が帰ってきた。

祖母と親戚の家へ行くらしい。

私たちは行かないけど。

父方の祖母はそれなりに良いお家柄の次女。

祖父も割と大きい家の次男だったらしい。

お見合いで結婚して家を出てるから、いわゆる分家。

本家の人たちとなんてほぼ関わりはない。

言ってしまえば無関係。

親戚の関係性とか詳しく聞いたけど別世界すぎてよくわからなかった。

まあ、もう自分たちとは関係ないのは確か。

そんな祖母が父と本家の家へ行った後うちに来た。

帰ってきてすぐ父が「祖母がふてくされてる」と言った。

なんか、本家の家がリフォームしてめちゃくちゃでかくて綺麗になってたらしい。

悔しかったんだろう。

祖母が母に「もう、おじいちゃんなんて、、、情けないわ、、」と言ってたのが聞こえた。

祖父は数年前に亡くなっている。

多分、大した遺産も残せてなくて情けない的な感じで言ったのだろう。

祖母のことは嫌いではないが、さすがに少し嫌な気持ちになった。

古い考えを持っている人だし、育ってきた環境もあるんだろうけど。

私にはわからない感情だな。

モノは残ってないけど、記憶はいっぱい残ってる。

きっと祖母もそれはわかってる。

祖父はすごい厳しい人ではあったけど、その分すごく優しい人でもあった。

私だって知ってる。

祖母なんて尚更知っているはず。

祖父が入院していた時なんて、祖母は足腰痛いのに毎日病院に通ってた。

昔デートした時の思い出なんかも、かっこよかったのよおって今でも自慢げに嬉しそうに話す。

すごい好きなんだろうなってのも知ってる。

だからこそ、衝動的とはいえ聞いてて嫌な気持ちになる言葉は言わないで欲しいなと思った。

聞いている方が悲しくなる。

遺産なんてあってもなくても幸せだったらどうでもいいのにな。